仕事力がアップ、トラブルも防ぐ「メモ」のワザ
仕事のメモひとつが大きなトラブルにつながることも。正確に伝わるメモ術を身に付けて、信頼される女性になりましょう。
メモにまとめる習慣が仕事力をアップさせる
電話の伝言メモや書類に添付する指示など、自分用の備忘録やTO DOリスト以外に、"人に渡す"メモを書く機会は多い。
「自分が理解できれば構わない備忘録とは違い、他人への伝言メモは、的確に、手短に必要事項をまとめる必要があります」と言うのは、これまで約1000社で業務改善の研修やセミナー、コンサルティングを行ってきた藤井美保代さん。「電話の伝言が正しく伝わらなかったため、500万円の契約が白紙になってしまったという事例もあります。伝言メモにミスがあると大きなトラブルにつながることもあるので、注意が必要です」
正確にメモを残すことはもちろん、離席者が戻ったら一声掛けるなど、伝言を確実に伝えるためのアクションを加えることで、トラブルは減らせる。
さらに「中堅以上になったら、同僚や後輩など、周囲のミスを予防するメモ術も身に付けたい」と藤井さん。後輩に仕事を頼んでも間違いだらけだったり、顧客から届いた書類に漏れがあったり。相手の不注意を責めたくなるが、「仕事を頼むときや、記入のための書類を渡すときに、してほしいことをメモにして添付すると、事前にミスを防げます。結果的に、やり直しという二度手間が減り、自分の仕事の効率もアップします」
小さなメモに頼みたい仕事の要点をまとめることは、自分の仕事力アップにもつながる。「仕事において、本当に重要な部分は全体の2割と言われています。伝えるべき最も重要な2割は何かを、常に意識してメモに書く。日々、そんな習慣を繰り返すことで、『仕事のポイント』を素早く判断する力も養えます」
押さえるべきメモは3つ
電話伝言メモ:「意外に基本ができていない人が多く、トラブルの原因になっています。伝言ミスをしないだけでなく、重要な案件は伝言が伝わったかをリマインドする必要もあります」
指示メモ:上司や後輩などに書類・仕事を託すとき、何をしてほしいのかを書いて添付。「忙しい相手でも、ひと目で何を求められているのか分かるような簡潔さが求められます」
思いやりメモ:顧客や取引先などに渡す申込書などの記入書類や、パンフレット類に添える一筆。「どこをどう見ればいいのかを的確に伝え、何度も書き直しを頼むリスクを回避できます」
「先方に言われたことだけをメモして担当者の机の上に置けばいいと思っているならNGです」と藤井さん。「電話の相手が伝えたい必要事項や要望を引き出すこと。さらに、その伝言が伝わったかを確認するまでが責任の範囲です」
「伝言フォーマット」を見ながら電話を受ける
(1)誰宛て
メモの置き間違いや床に落ちてしまうリスクも想定し、誰宛ての伝言かを必ず記入。
(2)誰から
電話の相手の社名と名前を。「聞き取れなかった場合は、最後の復唱時に確認して」
(3)してほしいアクション
折り返しが必要かなどを相手に確認。折り返しを求められたら電話番号も聞く。
(4)内容
「アポイントの変更」など電話の用件を。「緊急性を判断する材料になります」
(5)電話を受けた日時
「時間だけしか書かない人もいますが、当日見そびれることもあります。必ず日付も」
(6)電話を受けた人
「相手が急いでいた様子かなど、確認が必要になることも。必ず自分の名前を書いて」
最後に復唱でミスゼロに
(例)「日経商事の山田様でいらっしゃいますね。田中が戻りましたら、〇月×日のアポイントの日程を変更されたい旨を申し伝えます。私、佐藤が承りました。」
「上司や後輩などへのお願い事は、必要書類を机に置くだけ、あるいは口頭で説明するだけでは、してほしいことが相手に伝わらず、ミスにつながりやすいもの。頼みたい作業を具体的にメモにして添えましょう」
上司に渡す書類には、重要ポイントを箇条書きで添付
「忙しい上司には、簡潔に大切なことを見やすく書いたメモを。要点を絞ってあれば、隙間時間にサッと処理してもらえます」
(1)いつまでに確認してほしいか明記
日時が迫った書類は特に、一番上に確認の締め切りを、日付だけでなく時間も明確にして記入する。
(2)特に重要なチェック項目を3ポイント以内で
「2ページ目真ん中の金額部分」など、どこに記入されているかも分かりやすく書いておくこと。
後輩に託す仕事のメモは…
(1)依頼する仕事の内容
何の書類の作成なのか、何のために作成するのか、目的を最初に明確にする。
(2)期日とアクション
締め切りの期日とともに、自分に渡してほしいのか、上司に直接提出するのかも記入
(3)必ず押さえるべき内容を箇条書きに
書類作成の要点を3~4つに絞って。「メモを通じて仕事のポイントを理解できるようになり、結果的に後輩育成にもつながります」
複数枚にわたる契約書や申込書。「相手がきちんとすべてに目を通すとは限りません。絶対に確認してもらう必要がある部分、押印や記入が必要な箇所が分かるようにメモをつけることで、お互いのミスや時間のロスを防げます」
複数枚の書類は1枚目にまとめてお願いを
「複数枚の書類などは、各ページに付箋を貼っても、見落としてしまうことも。1ページ目に『◯ページ目の上段、◯ページ目の下段に押印をお願いします』などとまとめて書いて。さらに各ページに付箋だけを貼ると丁寧です」(藤井さん)
この人に聞きました
藤井美保代さん
多くの企業で、ビジネススキル研修や5S活動コンサルティング、業務改善指導などに携わる。著書に『「事務ミスゼロ」の仕事術』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
(日経ウーマン 2016年4月号の記事を再構成)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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