平康 慶浩 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント

平康 慶浩 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント

しかし、大学は違う。入試を経て、大学生としてふさわしい学力があるかどうかを判断される。

管理職に昇進するときも大学入学と同じような判断がされる。これを「入学基準」と言う。

拙著『うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ』(東洋経済新報社)にも書いたが、この時の視点の変化に対応できる人が管理職に昇進しやすくなる。目の前の仕事でいくら結果を出したところで、「上の役職」の考え方ができそうになければ、彼、彼女が出世することはない。一般社員と管理職との間にはそのような壁がある。

管理職への昇進基準やプロセスについては、第3回で詳しく説明する。

◆一般社員の間は「卒業基準」、課長からは「入学基準」

無事に課長になれたとして、その次の出世はなんだろう。課長になれば次長、そして部長を目指す人が多い。いわゆるラインマネジャーとしての出世だ。この時の昇進基準は、同じ管理職層の中だからといって、卒業基準ではない。平社員から主任や係長に昇進した状況とは違うのだ。

20年も昔なら、「彼も課長になって10年になるからそろそろ次長に」という昇進基準を使う会社も多かった。しかし今、そんな基準を用いている会社はどんどん減っている。私の知っている限りで言えば、景気に左右されづらいインフラ企業とか公的機関、意外に保守的なマスメディア関連、あとは中堅以下のオーナー企業の一部くらいだ。

その他の大半の企業では課長から次長、あるいは部長への昇進基準は、原則として「入学基準」だ。それも課長への入学基準よりもさらに厳しい基準を使う。その理由はもちろん、課長よりも部長のほうが、担当する職務が高度なので能力も高くないといけない、ということだ。

◆「職務主義」のもとでは、課長として優秀でも部長にはなれない

さらにもう一つ現実的で、かつ近年増えている考え方が「職務主義」によるものだ。この考え方は、上場している大企業などではむしろ当たり前になりつつある。「つまり、優秀な課長が部長になるのではなく、部長の仕事にふさわしい人を部長に据える」という考え方だ。なぜこれが職務主義によって生まれるのかと言えば、「課長や部長の仕事=職務」をはっきりと定めるようになったからだ。

実は一昔前までは、課長の仕事も部長の仕事もそれほど変わらなかった。単に年次が長い管理職が部長になり、若い管理職は課長だったりした。しかし職務主義のもとでは、課長とは最小の事業ユニット責任者であり、部長とは複数の事業ユニット=課を束ねて中長期での計画を策定する責任者、という区分を設けたりする。

課長と部長とでは、仕事のレベルだけでなく、そもそもの仕事の内容まで異なるようになったのだ。そこで生まれた考え方が職務主義であり、人事制度としていうところの職務等級制度なのだ。具体的に何かといえば、担当している仕事の大きさによって給与やポストを定義しよう、という考え方だ。

あたりまえだ、と思うかもしれない。でも多くの日本企業ではそうではなかった。

職能主義」があたりまえだったからだ。

[日経Bizアカデミー2014年12月9日付]

日経Bizアカデミーのアーカイブ記事のうちの人気連載を再掲載しました。次回は5月28日(土)に公開します。平康氏の書き下ろしの新連載も合わせてご一読ください。

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平康慶浩(ひらやす・よしひろ)
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント
1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年より現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。著書に『7日で作る新・人事考課』『うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ』がある。

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