1万円未満でバランスよく使いやすい万年筆4選
仕事でもプライベートでも、自分らしさを表現できるアイテムの一つが筆記具だ。中でも万年筆はその筆頭といってもいいかもしれない。まずは、気に入った一本を見つけてほしい。今回は、1000円から2万円未満までの買いやすい価格帯から最初の一本に向いた万年筆を7本を選んだ。本記事ではそのうち1万円未満の4本を紹介する(記事中の価格はすべて税別)。
すぐにゲットしたい「ハイエース ネオ クリア」
万年筆は面白い。書き慣れるとボールペンよりも楽なのだ。筆圧ゼロで書けるのは伊達(だて)ではない。しかも、カートリッジでなくコンバーター(インク吸入器)を使えば多くのインクから色を選べるし、ボールペンに比べると表情のある文字が書ける。そして、簡単には壊れないから長く使えて手になじんでくる。万年筆といえば、海外製を思い浮かべる人も多いと思うが、性能と価格のバランスは国産のほうがはるかに高い。まずは国産の万年筆を選ぶ方が確実だろう。最近はデザインも良くなってきたので、選ぶ楽しみも増えた。
細字用万年筆の名作、セーラー万年筆の「ハイエース」に連なる、昭和の匂いを漂わせるクールなデザインの軸と、手帳にも安定して書ける細字が魅力の「ハイエース ネオ万年筆」。ボールペンのように気軽に使える万年筆として登場したパイロットの「Kakuno」(1000円)が、手軽さで初めて買う一本に最適な万年筆だとすると、ハイエース ネオは普段の筆記具として使える実用性で選ぶ一本だ。その透明軸モデル「ハイエース ネオ クリア」はビジネスの現場でペンケースに一本入れておきたい筆記具に仕上がっている。
透明ペン芯と透明な軸、そしてコンバーターの使用が可能という要素が組み合わさったことで、軸からペン芯までが入れたインクの色に染まり、他の万年筆では味わえない独自の風情になる。この見た目のキレイさと、実用性の高さのギャップが、この万年筆の個性である。
好きな色のインクを入れて楽しみつつ、日常の筆記具として胸ポケットに差して使うこともできるわけだ。万年筆を使ってみたいけどKakunoではかわい過ぎるという大人にも安心して使ってもらえる。筆者としては、この軸のまま、中字や太字を出してくれないかと思う。この細い軸で太い線が書けるのは面白いと思うのだ。
ペン先のしなりが楽しめる「コクーン」
典型的な万年筆の軸デザインの一つである葉巻型は、日本に万年筆が入ってきた頃、圧倒的に人気があったモンブランを模したもので、今でも万年筆のアイコン的なデザインになっている。その流線型のフォルムを現代的な曲線に洗練して、繭(まゆ)を思わせる形に仕上げたのが、パイロットの「コクーン」シリーズ。中央が膨らんだ柔らかい曲線は人気が高く、同じデザインのボールペンもベストセラーになっている。
手の中にキレイに収まる金属の軸に、パイロットならではのスムーズな書き味の特殊合金製ペン先を組み合わせている。ペン先はF(細字)とM(中字)が用意されていて、宛名書きから手帳への書き込みまで対応する。ペン先はとても柔らかく、よくしなるので筆圧のコントロールが苦手な人でも線が途切れない。万年筆ならではのペン先のしなりが楽しめるのだ。グリップに向かって細くなっているので手の小さな女性にも使いやすい。ツヤ消しの塗装の発色が良く、しみじみとバランスのとれた万年筆なのだ。
初心者でも使いやすい「バランス PGB3000A」
万年筆の軸デザインは大きく2つに分かれる。1つは流線型で葉巻風の「バランス型」。もうひとつは上下が平たくなっている「ベスト型」だ。プラチナ万年筆の「バランス PGB3000A」は、その製品名の通り、バランス型デザインの万年筆。
名前がバランスだからというわけでもないが、本当にバランスが良い製品で、根元が薄く先に行くほど厚みを増すように作られたペン先は、軽い筆圧でも強い筆圧でも同じようにしなって、筆記角度によって線が途切れたりせず、初心者にとっても書きやすい。それを低価格に抑えたのがスゴイ。しかも、スナップ式のキャップながら密閉性が高く、数カ月の放置くらいではペン先は乾かず、すぐに筆記できる。
軸が透明のPGB3000Aと不透明のPGB3000があるが、筆者は透明軸をお勧めする。透明軸は中に入れるインクの色によって雰囲気が変わるのも面白いが、何より、インクの補充時期が簡単に分かるのがありがたい。インクが少なくなってインクが出にくくなると、つい筆圧を強くしてしまってペン先を傷めるのはよくある話。十分なインクが入っていることも書きやすさにつながるのだ。そして、その書き味は、金のペン先に近いスムーズさ。3000円の万年筆とは思えない、しっとりした書き味が楽しめる。キャップ部分の先端が白くなっていて透明軸の透明感が損なわれているが、その白いパーツは密閉性を高めるためのものなので、よしとしたい。
持っているだけで涼しげな「四季彩 プロカラー500」
セーラー万年筆の上位モデルの書き味を受け継いだ、「プロカラー500」シリーズの夏の色バージョン。この「プロカラー500」という万年筆は、軸の中央から下部が少しポッテリしていて、キャップを外すとそのポッテリがグリップ部分まで続いている。それがとても持ちやすく、手にしっくりくるのだ。また、この価格帯ながらキャップは本格派のネジ式。キャップの着脱は多少面倒だが、書くための儀式と考えると万年筆を使っているという実感は強くなる。
ペン先も良くできていて、紙に触れた瞬間にインクが紙にのる感覚や、紙の上を滑らせたときのスムーズな感触は、書くことの気持ちよさを伝えてくれる。夏バージョンは青の半透明タイプだが、他に薄いピンクの春バージョン「さくら」、鮮やかな朱色の秋バージョン「あかねぞら」、星くずをイメージしたラメ入りネイビーの冬バージョン「ほしくず」もある。また、透明にこだわった「透明感」も同じ「プロカラー500」の仲間だ。どれも発色に気をつかった丁寧な仕上がりだが、個人的には透明軸の「うちみず」か「透明感」を推したい。
(ライター 納富廉邦)
[日経トレンディネット 2016年4月14日付の記事を再構成]
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