「よ~く火を通した料理」に警告 発がん性物質が増加

日経ヘルス

2016/6/12
PIXTA
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焼く・炒める・揚げるなどの高温調理で発生するアクリルアミド。国際がん研究機関によって「おそらく人に対し発がん性がある」と認められ、世界的に摂取量を減らす取り組みが行われている。日本でも内閣府食品安全委員会が健康への影響を調査しており、2016年4月に「ヒトにおける健康影響は明確ではないが、懸念がないとは言えない」という最終評価をまとめた。これをどう理解すればいいのか。

 同委員会の佐藤洋委員長は、「ヒトを対象とした研究では、アクリルアミドとがんとの関係ははっきりしないが、発がん性物質であることは明らか。もっとも、日本人の摂取量は、動物実験で影響があった量の1000分の1程度。それほど心配はないが、体に必要なものではないので、できるだけ減らしてくださいということ」と説明する。

 日本人の推定平均摂取量(体重1kg当たり)は1日0.24μg(マイクログラム)で、EUの0.4~1.9μg、オーストラリア・ニュージーランドの1~4μgなど海外の数値と比べても多くはない。

 では、どうやって摂取を減らすのか。その前に日本人が何からアクリルアミドを摂取しているのかを見てみたい。

 同委員会の調査によると、最も多いのが高温調理した野菜(炒めたモヤシ、フライドポテト、炒めたタマネギなど)で56%を占める。つまり家庭の調理でも発生しているものだ。そこで必要なのは調理の工夫。「アクリルアミドは調理法を工夫すれば低減できる。ぜひ実行してください」と佐藤委員長も強調する。

 調理のポイントは3つ。まず、下準備でひと手間かけ、イモ類や野菜類はアクリルアミドになる成分を減らすこと。調理方法では、煮る・ゆでる・蒸すなど、水を使った調理に置き換えること。そして、炒める・揚げるなど高温調理する場合は、加熱時間を短くしたり、加熱温度を下げたりして、野菜や炭水化物を焦がさないようにすることだ。

(イラスト:三弓素青)
(イラスト:三弓素青)

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直火・高温で焼いた肉には健康へのリスクがある?

 高温調理といえば、肉にも注意が必要。星槎グループ医療・教育未来創生研究所の大西睦子医師によると、直火・高温で肉を焼くと「ヘテロサイクリックアミン」や「多環芳香族炭化水素(PAH)」と呼ばれる物質が形成されるという。動物実験では、どちらもがんのリスクを高めることがわかっている。「ウェルダン肉、フライパンやバーベキューで調理した肉のとり過ぎが、大腸がん、すい臓がん、前立腺がんの発症に関与すると報告されている」(大西医師)。

 これらの物質を減らすには、肉をゆでたり、蒸したりといった低温調理をすることだ。また焼くときは、焼く前に肉をマリネするといい。「ビールやワインに漬けると効果的。特に黒ビールは抗酸化物質の働きでPAHの形成を抑制する力が大きい」と大西医師は説明する。

■この人に聞きました

佐藤洋さん
食品安全委員会委員長。東北大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。米国ロチェスター大学研究員、東北大学大学院医学系研究科教授、独立行政法人国立環境研究所理事などを経て、2012年から内閣府食品安全委員会委員、2015年から同委員長。専門は公衆衛生学の分野
大西睦子さん
医師。星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部研究員。東京女子医科大学卒業。国立がん研究センター、東京大学医学部附属病院を経て、2008~13年、米国・ハーバード大学で肥満や老化などに関する研究に従事。著書に『ハーバード大学で研究した医師の警告 健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)など

(ライター 奈良貴子)

[日経ヘルス2016年6月号の記事を再構成]

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