4Kで変わるエンタ界 解像度、2Kの2倍
ファンが求めるのはライブ感
コンテンツプロバイダーが従来の2Kテレビの2倍の解像度で映像を楽しめる「4K」への対応を進めている。自前の衛星で2015年3月から世界初の4K商用放送を開始し、「スカパー!4K総合」と「スカパー!4K映画」を放送している「スカパー!」では、現在、1万世帯が4Kで視聴しており、5月から両チャンネルの放送時間を24時間に拡大。
一方、ユーザーにとっては、「2011年問題」と言われた地上アナログ放送から、地上デジタル放送への切り替えのギリギリのタイミングで2Kのハイビジョンテレビに変えた人も多く「4Kテレビを買うのはまだ先」というのが正直な気持ちだろう。ただ、"若者のテレビ離れ"も叫ばれる昨今、コンテンツ業界だけでなく、機器メーカーも来る4K時代に新しい風を期待し、マーケティングを進めている。
18年から4Kが売れる?
電子情報技術産業協会(JEITA)によると、薄型テレビの出荷台数において、4K(対応)テレビの割合は、18年以降、急速に伸びる見込みという(グラフ参照)。15年実績では4Kの出荷の割合はまだ全体の12.3%だが、20年には、市場で売られる30型後半以上のテレビのほとんどが4Kになっているという。
なぜその時期に4Kの出荷が増えるのか。18年の平昌冬期オリンピックを経て、いよいよ20年には東京オリンピックが控えている。「これまで、先の東京五輪、大阪万博、ワールドカップと、国民的イベントは常に、テレビ購入の大きなきっかけになってきた」(同協会)。今後2Kテレビが見られなくなるわけではないが「せっかく買い換えるなら4K」という声が圧倒的になるだろうというのが家電業界の期待だ。
また、18年になるとNHKなどがBSを使った4K、さらに8Kの実用放送を始めると見られていることも、18年以降に4Kテレビの普及が飛躍的に見込める要素として業界の期待を集めている。
では普及が進んだ場合、4Kならではの映像体験としてどんなものが人気になるだろうか。実証実験を含め、業界に先駆けて4K放送を進めてきたスカパーJSATで、4K番組の編成を担当する軽部岳大氏によると、映画やドラマの4K対応については、まだ作品数はこれから増える段階。一方、4Kでの音楽アーティストのコンサートの生放送やサッカーの生中継など、ライブ感が求められるコンテンツは、現状でも30代以上の大人層を中心に既に着実な人気を得ているそうだ。
特に人気だった4Kライブは『Mr.Children TOUR 2015 REFLECTION』ツアーファイナルの生中継と『ポール・マッカートニー OUT THERE in 日本武道館 2015』の録画放送で、いずれもプラチナチケットの公演だっただけに、視聴者からの反響は予想以上に大きかったという。アーティストの表情や動き、ライティングやスモークといった舞台演出をできるだけ近く、来場者と同じ場にいるように見たいという視聴者の臨場感への欲求を4Kの画質はかなり満たせると感じたという。
また、4Kのさらに先を見据えた8Kで高視聴率番組『笑点』を収録した展示(右写真)では、高座で落語家が人を魅了する上で大切な、目の動きや眼光がリアルに見えることが紹介されていた。
映画やドラマなど、映像コンテンツをいつでも簡単にネット経由で楽しめる「アーカイブ化」の流れがある一方で、今後、次世代のテレビについては、より「生」に近い臨場感を味わえるライブコンテンツの鑑賞ツールとして人気を得ることになりそうだ。
(日経エンタテインメント! 白倉資大)
[日経エンタテインメント! 2016年5月号の記事を再構成]
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