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1日8000歩と筋トレを習慣に 高齢者の寝たきり予防

2014/11/16

日に日に寒くなる季節を迎え、ふだん体をあまり動かさない人はますます運動不足になりそう。だが寝たきり予防など高齢者の健康維持には「歩行」と「筋力トレーニング」の両方のセットが大切という。歩くのは少しずつの累積でも意味があるので、まずは取り組むことが重要だ。国の支援で効果などの社会実証事業も始まった。

「高齢者がいつまでも元気に健康を維持するには、脳と動脈と筋肉をどう若返らせるかがキーポイントだ。それに必要なのが有酸素運動と筋トレだ」と筑波大学の久野譜也教授は指摘する。有酸素運動とはウオーキングやジョギングなど比較的時間を継続してできる運動のことだ。

日本人の高齢者が寝たきりになる原因は認知症、脳卒中、転倒・骨折の3つが大きな比率を占めている。久野教授が言及した脳は認知症にかかわる。動脈硬化などは脳卒中につながり、筋肉が衰えれば転倒して骨折する恐れも高まる。これらを改善できれば、寝たきり予防にも役立つと期待できるわけだ。

有酸素運動は血管の健康にとって重要で、筋トレはもちろん筋力の維持につながる。脳と認知症に関しては運動でアルツハイマー病が治るという意味ではないが、一部の軽度認知症では有酸素運動と筋トレの組み合わせが予防に有効という研究報告も世界的に出てきているという。

日ごろ何もしていない高齢者にとって手軽な有酸素運動は歩くことだろう。目標はまず1日に合計で8000歩だ。これは一度にまとめてでなくても、細切れに分けてでもよいという。

毎日8000歩である必要もなく、1週間の合計でみても構わない。毎日規則正しく1日分を歩かないとついつい怠けがちになる人もいるかもしれないが、半面、その日にできなかったからといってあきらめるのも早計だ。日によってばらついても、1週間の合計で8000歩の7日分の5万6000歩に達すればよいそうだ。

久野教授によると、移動に車やバイクを使う比率が高い、つまり徒歩や自転車の比率が低いと考えられる自治体では肥満の人の割合も高い傾向があるという。車を利用するより電車など公共交通機関を利用する方が歩数が多くなる傾向もある。車だとどうしてもドア・ツー・ドアになりがちだが、電車やバスならある程度の距離を歩くことになるからだ。

高齢者は病気の予防だけでなく、生活の機能を維持することも課題になる。「生活機能はやはり移動能力が大きい。移動能力はすなわち筋力なので、歩くだけではだめだ」と久野教授は筋トレの重要性も説く。筋肉はエネルギーを消費する基礎代謝に大きく影響しているので、筋肉が減ると肥満につながる恐れもあるという。

今年10月、筑波大やみずほ銀行などと新潟県見附市や福島県伊達市などの自治体は、運動をすると買い物などに使えるポイントを地域住民に付与する事業を始めると発表した。国の「健幸長寿社会を創造するスマートウエルネスシティ総合特区」に参加する6市で実施し、健康づくりの動機付けの制度を実証する。

同総合特区は住民が自然に歩いて暮らすまちづくりを目指している。データ分析に基づく健康施策を推進し、医療費などの削減につなげるのも狙いだ。

ただ、住民にはもともと運動に熱心な人たちがいる一方で、健康にあまり関心がない人たちもいる。特区の関連で取り組む今回の実証事業は、そうした無関心層にも運動をしてもらうのが目的で、付与する「健幸ポイント」が動機付けにどの程度効果があるかを調べるという。

ポイント付与は40歳以上の市民が対象で、地域ごとに定員があり、合計では1万人以上の参加を目指す。期間は12月から来年3月までの予定だ。

今回4カ月間の実施だが、年間にして最大2万4000ポイントを獲得できるよう仕組みを設計している。1ポイントが1円相当なので年間2万4000円相当になる。獲得したポイントは共通ポイントの「ポンタ」や商品券、寄付など利用方法を選べる。

これまでも健康づくりのポイント制度は各地の自治体や企業の健康保険組合にあった。だが、年間でせいぜい5000円の水準で、大きな成果は出ていなかったという。今回の高めのポイントで無関心層にどの程度効果があるかは不明だが、従来の調査研究も踏まえてポイント付与の仕方も工夫しており、健康づくりへと行動変容を促す条件などを探れそうだ。

運動不足の解消が必要と分かっていても、意欲を自分でなかなか高められない人は多いはずだ。動機となる事柄は金額に限らず人によって様々だろうが、個人レベルの動機付けにも役立つような研究の進展も今後期待される。

(編集委員 賀川雅人)

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