健康・医療

日経実力病院調査

脳梗塞、時間が勝負 血栓溶解・回収すぐ見極め (日経実力病院調査)

2017/6/4

脳の血管が詰まったり狭くなったりする脳梗塞の治療は血行を再開させるまでの時間をいかに短くするかが勝負だ。効果が高い血栓溶解剤「t―PA」が使えるのは発症から4時間半まで。日本経済新聞社が実施した「日経実力病院調査」では、充実したスタッフと設備、治療体制を整えて正確に診断して適切な治療を行う病院に救急搬送が集まり、症例数を増やしている実態が浮かび上がった。

血栓回収療法をする医師(兵庫県加古川市の順心病院)

今回の調査で内科的な治療を中心とする「手術なし」が656例で4位の国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)は患者が搬送されると、まずコンピューター断層撮影装置(CT)で調べ、脳梗塞を確認したら、磁気共鳴画像装置(MRI)で血流が滞っている範囲を把握して治療法を決める。

脳血管が詰まっていれば、血栓を溶かす血栓溶解剤t―PAを点滴で投与する治療が有効だ。同センターによると、投与できれば、3カ月後に自立した生活を送れる患者の割合は、投与しなかったときと比べて5割増加する。ただ適切なタイミングを逃すと、逆に出血などの合併症で症状が悪くなる危険性がある。

このため同センター脳血管内科の古賀政利医長は「治療する人、しない人を短時間で見分けるのが極めて重要だ」と強調。「発症から4時間半を経過していたり、広範囲で血流が滞っていたりした場合、さらに高血圧や高血糖が見つかった患者はt―PA投与で出血するリスクが高いので、対象から外す」と説明する。

内科的な治療だけでなく、外科的な治療が必要になることもある。同センターでは夜間でも3人の脳血管内科医のほか、外科的な治療ができる脳神経外科医も1人待機している。

「発症から4時間半」が過ぎても、「8時間以内」ならば「血栓回収療法」で回復する可能性がある。

内科と外科の医師が集まって症例検討(大阪府吹田市の国立循環器病研究センター)

今回の調査で「手術なし」が1位の順心病院(兵庫県加古川市)の潤井誠司郎院長は「時間が経過してt―PAができなかったり、効かなかったりした患者には、血管内治療の血栓回収療法を行う」と話す。

血栓回収療法は足の付け根などからカテーテル(細管)を血管内に入れ、エックス線の画像を見ながら血管の詰まった箇所まで誘導し、血栓を壊して吸引する。金属の網(ステント)で絡め取ったりする方法なども出てきており、潤井院長は「患者に合わせて選んでいる」とする。

同病院は「24時間365日、救急患者を断らない」という姿勢を明確にしており、潤井院長は「高い治療成績も評価されて近隣市町村ばかりでなく、県内の遠方から搬送される患者も増えている」という。

今回の調査で「手術なし」が2位だった千葉脳神経外科病院(千葉市)もt―PAと血栓回収療法を駆使して救命している。「血栓回収療法の治療効果はとても高い」という湧井健治院長は「内頸(ないけい)動脈のような太い血管が詰まった場合でも80%以上は再開通でき、今までなら寝たきりになってしまう人が歩いて帰宅している」と効果を説明する。

道北の脳疾患の拠点病院である旭川赤十字病院(北海道旭川市)は年間600~650人の脳梗塞患者を受け入れる。

「t―PA治療、血栓回収術に加え、血管を切開して血栓を取り除いたり、血管のバイパスを作ったりする外科手術など多くの治療の手立てを持っているのが強み」と滝沢克己・脳神経外科部長は話している。

■技術進歩で救命率改善

脳の血管が詰まって血流が滞り、その先の脳組織が死んでしまう脳梗塞は、血管が破れる脳出血、くも膜下出血と合わせて脳卒中と呼ばれる。戦後しばらくは高血圧を背景にした脳出血が多く、51年の脳出血と脳梗塞の比率は28対1。この割合は70年代に逆転し、現在では脳梗塞が脳卒中全体の4分の3を占める。

脳梗塞のタイプも高血圧に長期間さらされて細い動脈が詰まる「ラクナ梗塞」が減る一方、食の欧米化や高齢化の影響で、太い動脈が詰まったり狭くなったりする「アテローム性梗塞」や、心房細動などで心臓内にできた血栓が脳に飛んで動脈を塞ぐ心原性脳塞栓症が増えている。

CTやMRIの普及で診断の精度が格段に向上したうえ、治療法も次々に進歩している。

血栓溶解剤「t―PA」が2005年に認可され、当初は発症から「3時間以内」だったが、12年9月からは「4時間半以内」に拡大された。「8時間以内」に有効な血栓回収療法は10年10月から認められ、ステントを使う方法も14年から導入。救命率の改善や重症化防止に貢献している。

限定的だが開頭して外科手術を行う場合もある。t―PAがあまり効かない太い血管が閉塞した場合は、血管を切開して血栓を除去。再発予防を目指して、詰まった血管を迂回して血流をつくるバイパス手術を行うこともある。

調査は(1)症例数(診療実績)(2)医療の質や患者サービス(運営体制)(3)医療従事者の配置や医療機器などの設備(施設体制)の3つの視点で、病院選びの際に参考となる情報を、日経リサーチに依頼してインターネット上の公開データから抽出して実施した。
▼診療実績 厚生労働省が2017年2月に公開した15年4月~16年3月の退院患者数を症例数とした。対象は病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度を導入した1667病院のほか、導入準備中などを含め計3191病院。症例数の後の*は0~9例の誤差あり。「-」は0~9例。
▼運営体制 公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が病院の依頼で医療の質や安全管理、患者サービスなどの項目を審査した結果を100点満点で換算。点数の後に*があるのは13年4月以降の評価方法「3rdG」で審査された病院で、各項目をS=4点、A=3点、B=2点、C=1点として合算、100点満点に換算した。
▼施設体制 医療従事者の配置や医療機器などについて、厚労省が定めた診療報酬施設基準を満たしたとして各病院が届け出た項目を比べた。16年10~12月時点での届出受理医療機関名簿を集計した。

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