妊娠・出産の女性、復職後の処遇に「納得」必要

妊娠や出産を理由にした女性従業員の降格は、本人の意思に基づく合意があるか、業務上の特段の事情がある場合を除いて違法で無効――。10月23日に最高裁が示した判断は、働き続ける女性への配慮を企業に強く求めるものとなった。本人の意思をどのようにくみ取り、キャリアに反映させるか。働く側はどう対応していくべきか。独自制度を導入したオリックスの狙い、今後求められる視点について専門家に聞いた。

オリックスの平川さん(中)は職種や等級を変更できる「キャリアセレクト制度」を利用している

「総合職として仕事のやりがいを感じている。ただ、子育ても大切なので、当面は転勤の可能性をゼロにできる新制度の利用を決めた」

退社が最大の損失

オリックスの新規事業開発部で働く平川瑶子さん(31)は育児休業から復帰した昨春、総合職から転勤のない地域総合職に転換した。この「キャリアセレクト制度」は、本人の希望で総合職から一般職などへの職種変更のほか、部課長職からの降格も認める。最大の特徴は本人が望めば元の職種や役職に、いつでも戻れる点だ。2012年10月の導入以来、グループ10社で男性を含む計76人が利用した。平川さんは「先のことはわからないが、1歳9カ月の娘が小学校に上がる頃に総合職に戻るかを含めてキャリアを考えたい」と話す。

オリックスは女性登用やダイバーシティ(人材の多様性)施策で先行してきた。さらに新制度を追加した理由を、人事部の御正貴子課長代理は「決して多くはないが、子どもを持つ社員からの要望があった。退社が最大の損失。それを防ぐセーフティーネットは何重にも設ける」と説明する。子どもを持つ女性社員はグループ10社で1000人を超え、女性全体の3割に達している。もちろん、従来通り時短勤務を組み合わせるなどして同じ役職で復帰してもいい。それぞれ異なる事情にきめ細かく対応できるように選択肢を増やした形だ。

楽な仕事を推奨するわけではない。新制度でこれまでに降格を申し出たのは男性を含む3人だが、元のポジションへ復帰するまでの時間が空けば「同期に比べて昇格が遅れる可能性がある点などは面談で明確に伝える」(御正課長代理)という。社員から見れば、より多様な働き方を認められるが、主体的なキャリアデザインを求められる。

注目を集めた裁判は病院で働く広島市の女性が妊娠を機に負担が軽い部署への異動を希望したところ、副主任の肩書を外されたことを不服として争われた。仕事と育児を両立するうえで、同様の希望を出す女性も少なくない。オリックスの考え方は、企業と本人双方の「納得」を重視する取り組みとして他社にも参考になる部分がありそうだ。

法律家は判決をどう見るのか。企業の人事労務問題に詳しい国広総合法律事務所(東京・千代田)の中村克己弁護士は「女性の社会進出という時代の流れを踏まえ、企業実務にも一定の配慮をしたバランスの取れた判決。ただ、大企業の労務管理に与える影響は大きい」と話す。

働く側も意識を

妊娠出産に伴って実質的な退職勧奨や雇用契約変更、本人が希望しない部署や役職の変更を打診され、しぶしぶ同意するケースは依然少なくない。今後は「同意を裏付ける合理的な理由が客観的に存在するかどうかが問われる」(中村弁護士)。例えば管理職を外れることで子育てに余裕を持てるメリットと、今後の昇進や待遇面でのデメリットを適切に情報提供したうえでの同意かどうか。働く側も意識する必要がありそうだ。

不当な不利益変更があってはならないのは当然だが、男女や子どもの有無を問わず介護などの理由で働き方を変えざるを得ない人が増えるのは必至。なぜその処遇なのか、企業と社員が納得感を共有できる仕組みの模索は続く。

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