女性に投資熱 老後への備え、「優待」にも熱視線
女性の投資熱が高まってきた。株式や不動産での資産運用で老後に備えようと、若いうちから真剣に考える女性が目立ち始めている。
5月9日午後3時、東京・JR恵比寿駅前のオフィスビルの一室は20~30代の女性の熱気で満ちていた。「なぜ投資をするのか、まず目標を具体化する」。ファイナンシャルプランナー、工藤清美さんの家計管理の始め方、投資する不動産や株式をどう選ぶかという講義だ。集まった11人は丸2時間メモを取った。
建設業の女性(27)は「東京五輪に向けて不動産投資に人気が集まっていると聞き、興味を持った」。社会人5年目で資産運用を考え始めた。「私たちは祖父母の世代ほど年金はもらえないと思う。自分で何とかしないといけない」と語る。
月に5回程度講演する工藤さんは「参加者は20代後半から30代の女性が多い」と話す。結婚や出産、仕事を続けるか辞めるかといった選択肢が増え、「現実的な悩みが増える年ごろだから」。
独身を続けることを考えて資産計画を練り直す女性。夫と共働きでマイホーム資金を稼ぐ意識を高める女性。資産運用は真剣味を増している。
年2億円を稼いだ個人投資家、村田美夏さん(44)は東京大学を卒業後、銀行勤務を経て専業トレーダーに。「1日でほぼ全資産をつぎ込むこともある」豪快な姿勢から「ウルフ村田」と呼ばれ、セミナーに引っ張りだこだ。
投資セミナーやネットで知り合う女性から「『いい人と結婚したけど別れた』『終身雇用でなくなると退職金もあてにできない』といった話を聞くようになった」。女性が自分で資産をつくるという志を感じるという。
東大で学術支援専門職員として働く中林麻美子さん(45)は2人の息子を持つシングルマザーだ。2014年2月に株への投資を始めた。「高3と中2の息子の受験がある。教育費はまだかかる」。ただ経済的に豊かになるための再婚は考えない。「子どもとの時間を大切にしながら私らしい生活をしたい」。東南アジアで教育事業をする夢もある。手元資産を着実に増やすつもりだ。
株主優待は主婦投資家からの関心が高い。優待品の箱が埋め尽くす「優待部屋」を持つブロガーのようこりんさんは05年に株主優待の本と出合い「こんなにいろいろあるなんて知らなかった」。今は食事や家電、夫や息子の服など優待が関係しないものはない。
「優待バブルがくる」とみて、50銘柄から始めた取引を12年には350銘柄へ広げた。スーパーや物販・飲食店へと「はやっているか、足を運び見定めて」投資する。08~09年に数百万の損失を被ったものの、その後は手堅く利益を出す。
4月21日に東海東京証券が開いた「乙女のお財布セミナー」には、約6倍の抽選で41人の女性が東京・日本橋に集まった。講師は元将棋棋士で、株主優待生活が話題の桐谷広人さんだ。
自営業の女性(36)は「今までは投資信託だったけど、個別銘柄を買ってみようと思った」。結婚はしているが、投資で得た収入は「自分の資産運用に振り当てるのを優先している」という。
ライフプランをパートナー頼みにせず、自ら稼ごうという女性の増加が、投資への参入を増やしている。
(湯沢維久、安倍大資、佐藤亜美)
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低リスク柱、株にも意欲
日本経済新聞社「ウーマノミクス・フォーラム」の女性会員747人に4月中下旬、投資について聞いた。「資産運用をしている」人は61%。始めたきっかけ(複数回答)は「老後の備え」が54%で最多だった。「趣味として」始めた人も21%と多い。2013年以降は59%の人が資産を増やしたという。
資産配分先(複数回答)は株式と定期預金と答えた人が各68%と最多。確定拠出年金などの個人年金(46%)や外貨預金(34%)が続く。預金などの低リスク資産を中心に、堅実に運用している姿勢が垣間見える。
ただ今後したい運用は株式が56%と最多。外貨預金が24%、不動産投資信託(REIT)が21%で続く。長い低金利からリスク資産への配分増を考える人が増えている。
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