海外だって付き添う 「妻の仕事尊重」活力にWの未来 俺に任せろ

「子育ては忙しい。ゆったりできるかと思いきや大間違いだった」。8月、妻の留学に伴って移り住んだ英国ロンドン郊外で「主夫」生活を始めた中村遼(30)は、泣く長女(1)をあやしながら苦笑いする。

子供も手伝い洗濯物を干す早川徹さん(横浜市栄区)

妻の祐子(33)は現代英国演劇の研究者。大学の非常勤講師だったが、本場での経験が必要と考え、1年間の留学を決めた。

休める方が休む

話し合い、大手人材派遣会社に勤める遼が1年間育児休職して祐子に付き添うことに落ち着いた。「男なのに、という葛藤はなかった。休める方が休めばいい。貴重な経験になる主夫生活を楽しみたい」と話す。

かつては夫のキャリアを優先し、妻がキャリアを諦めるのが一般的だった。しかし今や、共働き世帯数が1000万を超え、専業主婦世帯数を大幅に上回る時代。内閣府の世論調査(2012年)によると、男性の46%が「女性は子供ができても、ずっと職業を続ける方がいい」と回答。41%が「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に反対する。

役割意識に縛られず、妻のキャリアを尊重したいと考える男性が若い世代に増えてきた。育児休業制度が整っていない製薬会社に勤めていた早川徹(32)は転職でその思いをかなえた。

薬剤師の資格を生かし顧客とふれあう職場を求めて5年前、店舗型薬局に移ったが「育児休業があることを最優先に探した。シフト制も魅力だった」。

三菱電機で人工衛星を開発する妻、章子(33)は海外出張もあり、最善の選択と思った。3年後に長男が生まれ、章子の産休を継いで4カ月の育児休業を取得した。「育児のハンディなく、仕事をこなす妻の姿を見られるのはうれしい」

「研究機関で働く妻の方が仕事への思いが強い」と上司らの反対を振り切り大手自動車会社を退社したのは東京都文京区の堀込泰三(37)だ。きっかけは妻、実苗(37)の米国勤務。実苗も当初は「研究職は不安定で、一人で家族を養うのは難しい」と反対した。当時、長男は2歳。泰三は「収入のことよりも家族で一緒にいたかった」と話す。

制度整備に遅れ

三菱化学やキリンビールなど配偶者の海外転勤に同行するための休職を認める制度を持つ大手企業もある。もともとは「夫の転勤を理由に優秀な人材が失われては困る。女性に仕事を続けてもらうために始めた」(資生堂)。だが、10年から現地で語学研修などを受けるのを条件に最長3年認めるアサヒビールは「男性の利用はまだないが、今後は出てくるだろう」と想定する。「現地でスキルアップして帰ってくるなら男性も歓迎だ」という。

もっとも、制度導入にはコストも時間もかかり、こうした制度がある企業はまだわずか。人事院の調査では社員50人以上の約6400社中、0.9%だ。

女性の活躍を制限してきた育児の負担や転勤。その制限を肩代わりする男性が出てきた今、企業は休職制度など工夫をしないと、男女問わず優秀な人材を失うリスクが高まる。女性も男性もさらに能力を伸ばせる活力ある社会を生む知恵が問われている。=敬称略