60歳以上の女性で写真集 あこがれは世代を超えて
「OVER60 Street Snap」MASA&MARI著
通りでステキな人とすれ違い、「あの人のようになりたい」とあこがれる。相手が近い世代ならよくある話だが、若者がかなり年の離れた年配者にそんな気持ちを抱くことはなかなか想像しにくい。
「OVER60 Street Snap」(主婦の友社)は、2人の若い著者が「憧れるほどカッコイイ」60歳以上の女性に通りで声をかけて撮りためた写真集。色鮮やかで個性的なファッションを着こなす女性たちの姿と、コーディネートのポイントやファッションの思い出などを載せた。これが世代を問わずに受け、2014年10月の発売から1年半で5万5千部を発行。3月には第2弾「OVER60 Street Snap2」が出て、出足好調だ。
著者2人はともに東京在住の20代後半。写真家でも編集者でもない、ふつうの勤め人だ。MASAが福祉関係の仕事を通して年配者と交流するようになったのをきっかけに、彼らと若者をつなぐ活動がしたいと、ともにファッション好きなMARIら仲間を誘い、13年3月、60歳以上限定ストリートスナップのブログ「リデアル」を立ち上げた。リデアルとは「理想、憧れ」という意味のフランス語だ。
書籍化を持ちかけたのは、主婦の友社第1事業部編集部の依田邦代氏。「若者だけでなく幅広い人に向けて発信できる」と提案した。だが、週末だけの撮影は遅遅として進まない。銀座や日本橋に足を運び、2人が納得した人に声を掛けるが、見ず知らずの若者に声を掛けられて撮影に同意してくれる人は少ない。
「声をかけるのは一日に1人か2人。厳選できたのは、彼らの活動があくまで仕事ではないからでしょう」と依田氏。そのため追随する写真集もなかなか出ないという。
「歳を重ねることは、愛の対象が広がっていくこと」「ひととの出会い、つながりはすべて必然だと思う」。深い人生経験から紡ぎ出された前向きでしなやかな言葉が、堂々とほほえむ彼女たちの姿とともに紹介され、読者から「年を取るのは悲しいことじゃない」「彼女たちに勇気をもらった」と共感が広がる。これを見て再びファッションを楽しむ年配者も増えているそうだ。
(律)
[日本経済新聞夕刊2016年4月20日付]
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