スポットライト/世紀のスクープ
新聞記者のあるべき姿
これぞ新聞の正義、ジャーナリズムの勝利!と胸がすくドラマが生まれた。
カトリック神父による児童の性的虐待と、その事実を長年隠ぺいしてきた教会の内部工作を告発した記者たちの取材活動の記録。
ピュリツァー賞受賞のこの記録を『扉をたたく人』のトム・マッカーシー監督が映画化。今年のアカデミー作品賞と脚本賞を受賞。
米東海岸マサチューセッツ州ボストン、2001年。ボストン・グローブ紙の特集記事〈スポットライト〉を担当するチーフのロビー(マイケル・キートン)以下、3人の記者たちは新任の局長(リーヴ・シュレイバー)から、1976年に端を発し、現在に至る地元カトリック教会のゲーガン神父による少年の性的虐待疑惑を探るよう提案された。取材を始めながら戸惑いもあるのはグローブ紙の読者の53%がカトリック信者だから。反発を買うのは必至だ。
とはいえ幼くして心に傷を負った被害者に会えばやる気が奮い立つ。彼らを支える人もいれば、教会を有利な示談で救う弁護士もいる。調べが進むうちに問題を起こした神父は数多く、他の教区へ異動させられていることが見えてくる。教会ぐるみの隠ぺい工作か。
真実を知りたい記者たちの思いが取材意欲を突き動かす。演じる俳優たちのアンサンブル演技の妙。そこに人間味が滲(にじ)んで真実味が増す。ロビーは、かつて神父の犯罪を軽視したことを後悔した。悩む彼に局長は言う「私たちは暗闇の中を手探りで歩いている。そこへ光が差したとき初めてそれが事実とわかる」。今からでも遅くはない。
そんなとき9.11事件発生で連載開始にストップがかかるが、あきらめずに時期を待つ。ここにはペンは剣よりも強いことが信じられる人々がいる。ちょっと古い? でもこれが報道に携わる者のあるべき姿だ。2時間8分。
★★★★★
(映画評論家 渡辺 祥子)
[日本経済新聞夕刊2016年4月15日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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