ポッコリ下腹、へこませるには 関節の動きがカギ
関節は骨と骨とのつなぎ目で、本来は大きく動かせる部分。だが、仕事で長い時間パソコンに向かっていたり、同じ姿勢でスマートフォンを操作したりしていると、動かすことがなくなる。関節は同じ角度で固定された状態になり、周辺の筋肉に悪い影響を及ぼす。
筋肉が縮む
まず問題になるのは、筋肉が硬くなること。関節を動かさないと、関節まわりの筋肉は伸び縮みする機会が少なくなり、本来の弾力を失って、硬く縮んでしまう。例えば、肩関節まわりの筋肉が硬く縮むと、背骨が丸まった姿勢になる。腹筋は使われずに緩むから、脂肪もたまり、下腹が出てしまう。
もう一つの問題は、筋肉がやせ細っていくこと。筋肉がやせると、そのすき間を埋めるように脂肪が蓄積されるが、筋肉に比べて弾力がないため、たるみになる。例えば、歩くときに歩幅が小さかったり、ひざが曲がった状態だったりすると、股関節をしっかり動かした歩き方になっていないので、周辺の筋肉が働かず、お尻のたるみになってしまう。
順天堂大学医学部の坂井建雄教授は、「動かないことで関節周囲の組織が変化する。例えば、寝たきりに近い人の場合、関節を動かす筋肉がごっそりと減って、脂肪に置き換わっていることがある」と話す。
厄介なことに、関節を動かさないで筋肉が弱ったり、硬くなったりすると、さらに関節が動きにくくなる。愛知医科大学運動療育センターの宮川博文主任は、「動かす機会がないことで、筋肉は収縮しないようになり、筋力が低下する。さらに関節そのものの柔軟性が低下し、筋肉と神経の連携による操作性も悪くなる」と説明する。
そこで、こんな負のスパイラルに陥ることがないよう、まず自分の関節がどんな状態にあるかをチェックしてみよう。チェックは、関節が正しい位置にあるかどうか、動かせる範囲(可動域)が広いかどうかなどを見る。
可動域を意識
例えば、肩関節を調べるときは、壁に背中をつけて立ってみる。肩が壁から大きく離れてしまうなら、肩関節の位置がずれている。こんな状態だと、「肩関節と一緒に肩甲骨など周囲の骨も動いてしまい、肩関節自体の可動域が狭まる」とフィジカルトレーナーの山坂元一氏。
股関節は、片脚を抱えて立てるかどうかで判断する。グラグラと安定しない人は「座り姿勢により、お尻の筋肉が圧迫されて硬くなり、弱っている」と、股関節ストレッチスタジオで指導にあたる藤本陽平氏は話す。
関節の動きをチェックしたら、体を動かして、関節の動きをよくしよう。
まず、姿勢が悪く、関節の位置がずれたまま筋肉が硬くなったり、弱くなったりしている人に対しては、「ストレッチで硬い筋肉をほぐし、トレーニングで弱い筋肉の強化をしてほしい。関節の硬さが改善し、可動域が広がる」と坂井教授はアドバイスする。
ずれた関節の位置を正すには、「『あご引く、腹引く、尻締める』を合言葉に、気づいたら姿勢を正して」と宮川主任。
運動は大変と感じる人に、ぜひ試してもらいたいのが、日常のちょっとした動作。正座も骨盤を起こして背すじを伸ばす立派な"トレーニング"になる。「長時間、正座をして強い負担を与える必要はない。専用椅子でお尻を支えるなど、ひざの負担を減らして数分間行えばいい」と昭和大学病院リハビリテーションセンターの千葉慎一主任は話す。
ほかにも、あぐらをかくこと、和式トイレでしゃがむこと、四股を踏むことは、股関節を動かす運動になる。
股関節の動きをよくするには、いつもより大きな動きをして、「可動域」が狭まらないようにすることも大切だ。歩くときは大股にして、股関節を動かそう。「大股歩きは、筋力アップにもエネルギー消費にもなる」と、バイオメカニクスを研究する立命館大学の伊坂忠夫教授。
ただし、どの運動も痛みがあるときは無理をしないこと。できることから少しずつ始めよう。
(日経ヘルス編集部)
[日経プラスワン2016年2月20日付]
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