本格中華の店 料理の選び方やマナーは
一汁四菜、珍味にも挑戦
多彩な食材に多様な調理法、中華料理の特徴はメニューの豊富さだ。ホテルオークラ東京の「桃花林」では「常時あるのが200種、裏メニューもあって300種を超える」(相武史マネジャー)。ずらりと並ぶ中国語名を見て、何を頼もうか困惑することも。
東京都内に住む主婦はせっかくハレの日に出かけても「つい酢豚など知っている料理を注文しがち。おいしい料理の頼み方、組み合わせを知りたい」という。
そこで、服部栄養専門学校中国料理主席教授の斎藤昭彦さんに尋ねた。「基本は一汁四菜。汁ものを1種類、肉、魚介、野菜、卵、豆腐、麺飯類から4種類をバランスよく選ぶ」という。まずメーンで食べたい食材を決める。メーンが肉なら副菜は魚といった具合に組み合わせていくとよい。
気をつけたいのは調理法や味付け。蒸す、焼くなどの調理法、しょうゆ、花椒(ホアジャオ)や唐辛子などの辛み、黒酢の酸味、あっさりした塩味などの味付けから重ならないよう選ぶとよい。「1皿は食べたことのない珍しい食材に挑戦を。印象に残る食事になる」(斎藤さん)。
ひと口に中華料理といっても、広大な中国。地方ごとに独自の食文化が発展した。使う素材や調理法、調味料も異なる。まず北京、広東、上海、四川の四大料理を知っておこう。
「北部の北京料理は寒い地方なので濃い味付けになり、逆に南の広東料理は素材を生かした薄味」と斎藤さん。上海料理はしょうゆ味や黒酢を使う甘辛味など、湿度が高い内陸部の四川料理は発汗しやすいよう、香辛料のきいた物が多い。地域ごとのおおまかな特徴が分かれば、助けになるはずだ。
中国語メニューは調理法と材料や味付けと材料で表されることが多い。「炒鶏肝」は鶏レバーの炒(いた)め物。「糖醋鯉魚」は鯉(コイ)の甘酢あんかけとなる。地名や人名がつくこともあり、北京ダックは「北京●鴨(●は火へんに考)」。家鴨(アヒル)をあぶり焼いた料理の意味だ。
とはいえ読み解くのは初心者には難しい。サービススタッフに聞くのは恥ずかしいことではない。「好みの素材や味付けなどを伝え、相談してほしい」(相さん)。積極的なコミュニケーションが、おいしい一皿にたどり着くカギだ。
身近なようで奥深い中華料理。選ぶ楽しみを知れば、新しい発見につながる。
回転台は時計回りに
円卓を使う宴席には、意外に知らないマナーやルールがある。中央の回転台は「料理を並べるためのものなので使用したグラスや器は置かない。時計回りに回すのが基本」(相さん)。
上座と下座はどう判断するのだろう。入り口から一番遠い席が上席。上席の人に向かって右が次席、左が三席となる。入り口付近の席はスタッフが料理を取り分けるため、1人分空けておくのが基本ルールだ。
食事中の会話を大切にする中華料理ならではの作法も。「お茶のポットが空になった時、ふたを傾けるとつぎ足しを頼むサインに」(相さん)。会話を中断して人を呼ぶ必要がない。
中華料理は本来、器をテーブルに置いたまま食べる。持ち上げるのはマナー違反だろうか? 「日本なら、あまり気にしなくてもよい。スープやチャーハンなど、持つ方が食べやすい場合もある」(相さん)
「堅苦しくない雰囲気が中華料理の魅力」と相さん。最低限のマナーを守って和やかに楽しみたい。
(ライター 糸田 麻里子)
[日経プラスワン2015年10月31日付]
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