僕もプログラマーに コースに参加、学ぶ子供増える
論理的思考、鍛える好機
東京都内の小学校に通う5年生の佐々木健太くん(仮名)は夏休みを利用して、CAテックキッズが主催するプログラミング教室に参加した。選択したのは、東京・渋谷の会場で学ぶ5日間のコース。皆の前で成果を披露する発表会が翌日に迫っていた8月中旬、教室で学習の動機を聞いた。
パズル感覚の操作
「ゲーム開発者として任天堂に入社し、修業を積んでから独立するんだ」。そんな明確な将来像を披瀝(ひれき)すると、未来のゲームクリエーターはパソコンに視線を戻した。
佐々木くんが使っているのは「スクラッチ」。米国で開発された、子供向けプログラミング言語の代表格だ。パソコンのブラウザー(閲覧ソフト)から無料で利用でき、日本語を含む40以上の言語で提供されている。6歳ころから学習できる。「難しくて敬遠しがちなプログラミングを、取っ付きやすくした」と語るのは、開発者で、米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボのミッシェル・レズニック教授である。
「もし~なら」「~回繰り返す」「でなければ」といった語句をパズルのようにマウス操作で組み合わせるだけで、2次元のアニメーションやゲームが完成する。
スクラッチのように、論理構造を視覚的に示して組み立てる言語を一般に「ビジュアルプログラミング言語」と呼ぶ。子供向けに特化したものには米グーグルの「ブロックリー」や、文部科学省の「プログラミン」がある。普及度でいえば、スクラッチが断トツだ。
自分の作品を公開できるウェブサイトがMITメディアラボによって運営されている。恐竜が踊るアニメや、飛んでくるボールを打ち返すゲームなどの作品に触れられるほか、プログラムの中身を見てどうやって作られたのか知ることができる。2年前からサイトの利用者が本格的に増え始めた。現在は700万人以上が登録し、公開中の作品は1000万件を超える。
もはやビジュアルプログラミング言語では物足りないという子供たちに人気なのが、「マインクラフト」のプログラミング機能だ。
マインクラフトは現在、世界中の子供たちの間で大ブームとなっているゲームソフトで、パソコン版の販売数は2000万本を超える。プレーヤーは森や山、川がすべてブロックで造られた3次元の仮想世界の中で、モンスターから身を守ったり、家や城を建てたり、家畜を飼ったりする。米マイクロソフトが買収したスウェーデンのモヤンが提供しており、パソコンのほか、スマートフォンなどから利用できる。
ゲーム内機能が人気
マインクラフトをより楽しめるよう「付加データ」も多数出回っており、その中の1つが「コンピュータークラフト」だ。ダウンロードすると、仮想世界の中にパソコンが現れる。その画面にプログラムを打ち込むことで、仮想のロボットに家を建てさせたり、穴を掘らせたりする指示を与える。
ビジュアルプログラミング言語と違って、実際にキーボードでプログラムを入力する難易度の高いものだが、早ければ9歳ころから始められる。人気ゲーム内の機能とあって、CAテックキッズの教室の中でも盛況のコースになっている。
大人であっても、プログラミングの心得がなければ、手応えは十分にある。レズニック教授は、「プログラミングが身につけば表現の幅が大きく広がる」と、その効用を説く。
(電子編集部 吉野次郎)
[日本経済新聞夕刊2015年8月20日付]
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