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増える果物アレルギー 花粉症患者、誘発のリスク 加熱で食べられる場合も

2015/8/11 日本経済新聞 朝刊

 猛暑が続く中、スーパーや生鮮食料品店にはスイカやメロンなどのおいしそうな果物が並び、食欲をそそられる。ただ、これらの果物を口にすると、かゆみなどの違和感を感じる「果物アレルギー」の人もいる。国民病となった花粉症の患者増で、果物アレルギーの患者も増えているという。

 相模原市のTさん(31)は2年前、出産後に大好きなリンゴを食べていたら、口の中や耳の奥にかゆみを感じた。気のせいだと思い食べ続けていたが、かゆみは治まらない。ナシやモモでも同じ症状が続いた。

店頭にならぶスイカやリンゴ

 1年後、病院で血液検査を受け、ハンノキ花粉とリンゴ、モモ、イチゴにアレルギー反応を起こす可能性が高いことが分かった。Tさんは慢性の鼻炎を患っていたが「まさか花粉症と果物アレルギーだったとは」。果物好きのTさんはアレルギーを起こしやすい果物をできるだけ避け、スイカやメロンなどを食べている。

 国立病院機構相模原病院の海老澤元宏・アレルギー性疾患研究部長は「果物アレルギーは、2つに大きく分かれる」と説明する。じんましんやせきなど全身症状を伴う「即時型」と口の中だけでかゆみなどの症状が出る「口腔(こうくう)アレルギー症候群」だ。

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 即時型は乳幼児や小学生がバナナなどを食べたときに起きることが多い。給食で初めてキウイフルーツを食べてアレルギーを起こした例もあるという。果物に含まれるアレルギーを起こす原因たんぱく質(アレルゲン)が胃や十二指腸で分解されず、小腸から吸収されて血流に乗って体内を巡るので全身症状となって現れる。

 即時型は若い世代を中心に多くみられる。厚生労働省研究班による即時型の食物アレルギーの全国調査(2011年)では、新たに発症した患者の原因となる食べ物を年齢別に調べた。4~6歳では果物が全体の16.5%を占め、第1位だった。7~19歳では甲殻類に次いで2番目に多かった。

 口腔アレルギー症候群は口の中の粘膜に果汁が触れて起きる。唇が腫れたり、口の中がかゆくなったりする。食べて5分以内に症状が出ることが多いという。アレルゲンが小腸に到達する前に壊れるため、主に口の中だけで反応が起きる。

 近年、このタイプの果物アレルギーが増えている。シラカバやオオバヤシャブシの花粉症患者の約2割でバラ科果物にアレルギーがみられたとの報告もある。

 ではなぜ花粉症が増えると、果物アレルギーの人が増えるのか。湿地などで見かけるハンノキや、主に長野県や北海道に多いシラカバで花粉症になっている人は、バラ科のリンゴやモモ、サクランボなどでアレルギーを起こすリスクが高い。

 アレルゲンの構造が、ハンノキやシラカバの花粉とこれらの果物で似ているからだ。アレルゲンの構造が約70%以上似ていると、アレルギー反応を起こすといわれる。

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 同様に、イネ科のブタクサが原因で花粉症になっている人は、ウリ科のメロンやスイカでアレルギーが起きやすい。最近は20~30代で花粉症にかかる人が多く、果物アレルギーも増えていると専門家はみる。

 ゴムノキから採れるラテックス(天然ゴム)もアレルギーの原因物質になる。ゴムアレルギーの人の一部は、熱帯地方の果物のバナナやアボカド、マンゴー、パパイアなどでアレルギーを起こすことがある。ゴム中のたんぱく質とこれらの果物に含まれるたんぱく質の構造が似ているためだ。

 一般に、花粉やゴムによって起きる果物アレルギーは症状が軽く済むことが多い。ただ全身に反応が出る人は、複数の臓器に急速に症状が現れ、命に関わる重症の「アナフィラキシーショック」になる例もある。

 果物を食べて口の中などに違和感を感じる人は、一度、病院で検査を受けた方がよい。血液検査と皮膚テストをすれば、果物アレルギーかどうか判定できる。

 特定の果物にアレルギー反応を起こす人は、その果物のアレルゲンとのみ反応する血液中のたんぱく質(IgE抗体)が増えている。皮膚テストは専用の針で果物を刺した後、腕に針を刺す。アレルギーがあれば、しばらくして刺した部分が赤く腫れてくる。

 検査を受ければ、原因が何か診断が可能になる。海老澤部長は「全身に症状が出る即時型ではアレルギーを起こす果物を避けるしかないが、口腔アレルギーによる軽い症状であれば食べるか食べないかは本人にまかせている」と話す。

 Tさんはできるだけリンゴやモモを避けているが、どうしても食べたいときはかゆくなるのを覚悟して食べているという。リンゴを食べ続けるか、花粉症に対する免疫療法をすると、症状が軽減するという報告もあるが、十分な科学的証拠はそろっていないという。

 口腔アレルギーを起こす果物のアレルゲンは熱に弱く、多くの場合、加熱すれば食べることができる。リンゴはアップルパイやジャム、ジュースなどに加工すれば大丈夫だ。「対症療法として抗ヒスタミン薬を服用すれば、かゆみなどの症状の緩和が期待できる」とあいち小児保健医療総合センターの伊藤浩明副センター長は話す。

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■モモ、リンゴなどの20品目 厚労省、食品に表示推奨

 食物アレルギーといえば卵、牛乳、小麦、ソバなどがよく知られる。小学校で食物アレルギーのある児童が給食後に死亡した事故も起きている。アナフィラキシーショックになった場合は、ショック症状を緩和する自己注射薬の「エピペン」の使用を勧めている。

 果物より少ないが、野菜でアレルギーを起こす人もいる。トマトでアレルギーになる人は同じナス科のジャガイモ、セリ科のセロリやパセリなどでも起こす可能性が高い。

 厚生労働省はアレルギー症状を引き起こす特定原材料に準じる20品目にキウイフルーツ、モモ、ヤマイモ、リンゴ、バナナなどを挙げ、できる限り表示するよう推奨している。

(西山彰彦)

[日本経済新聞朝刊2015年8月9日付]

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