進撃の巨人 ATTACK ON TITAN
巨人の具現化 面白い
テレビアニメ化され、その劇場版も公開された、諫山創(いさやまはじめ)のベストセラーまんが「進撃の巨人」を、「ローレライ」(2005年)「日本沈没」(06年)等の樋口真嗣監督で映画化。脚本は「GANTZ」2部作の渡辺雄介と映画評論家の町山智浩。
人類が、謎の巨人たちによって絶滅の危機に追いやられ、壁を築いて、その内がわで生きのびているという状況設定。巨人たちをどう具現化するか、そして巨人とたたかうための原作最大のオリジナル兵器「立体機動装置」をどう描写するかが、原作ファンや、そうでなくとも大体の設定を知っている者にとっての関心事だろう。
巨人がすがたを見せなくなってから約百年がたち、壁の外の世界にあこがれるわかい世代が出てきた。原作では、こどもたちなのだが、ここではエレン(三浦春馬)、ミカサ(水原希子)、アルミン(本郷奏多(かなた))、みんな青年だ。だが、かたりあうことは、元のままこどもっぽいので違和感がある。
突如、タイトルを出すタイミングに合わせたように超大型巨人(身長120メートルの設定)が壁の上に顔を出し、壁の下部を蹴破り、そこからもっと小さな巨人が大量にはいってきて、非常事態がはじまる。
エレンたちは軍隊にはいる。ここでの、新しいなかまたちとの軋轢(あつれき)の描写が執拗に長い。学園になじめないこどもたちをえがく思春期もののようだ。巨人との戦闘で戦死した兵を「英霊」とよぶのも気になった。寓意をあらぬ方向へ曲げる。
終盤になって、ようやく本格的な戦闘シーンがはじまり、巨人にのみこまれたエレンが、巨人と化す。この意外な展開で9月公開の後篇への期待をあおる。
本物の人間を写してデフォルメしたという巨人たちはおもしろい。「ヌイグルマーZ」の井口昇監督そっくりなのがいるなと思ったら当人の出演だとか。1時間39分。
★★
(映画評論家 宇田川 幸洋)
[日本経済新聞夕刊2015年7月31日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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