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誰もが持つ「口臭の不安」 原因と解消法

2015/7/16 日本経済新聞 プラスワン

人と話す時、口臭が気になって口を大きく開くことができず、ボソボソと話してしまったり、電車など混み合った場所で思わず息をひそめてしまったり。誰もが少なからず持つ「口臭の不安」。どう解消すればいいか、専門家に聞いた。

口臭の訴えは、体の不調のなかでも独特だ。「自分が困ることはほとんどないが、周囲のことを考えて不安になる」と指摘するのは、鶴見大学歯学部付属病院(横浜市)口腔(こうくう)機能診療科で口臭外来を開く、中川洋一准教授。

口臭対策のポイントは2つ。自分の状態を客観的に知ることと原因を正しく知ること。大半の人は自分に合ったケアで改善するからだ。口臭外来などを受診すれば、分析装置を用い、どれぐらい臭いがあるかを調べてくれるが、中川准教授は「まずは家族などに率直に尋ねてみて」と話す。

■細菌が根本原因

胃腸や気管支などの病気で臭いがする場合もあるが、9割以上は口の中にいる細菌が原因となっている。細菌は、唾液やはがれた粘膜、食べ物カスに含まれるタンパク質を分解し、硫化水素などの口臭物質(揮発性硫黄化合物)を作り出す。

例えば、歯の磨き残しがある場所にできる歯垢(しこう)は細菌の固まり。中川准教授は「小学校に入る頃に1人で歯磨きするようになり、不十分だと歯垢がたまりやすい」と話す。子供の口臭に気づいたら、正しい歯磨きを教えよう。

リンパ組織が発達する時期である中学生、高校生で口臭の原因となることが多いのは、口の奥にあるアーモンドのような形をした扁桃(へんとう)にできる膿(のう)栓だ。強い悪臭を放つことがあるので「臭い玉」と呼ばれることもある。

はくらく耳鼻咽喉科・アレルギー科クリニック(横浜市)の生井明浩院長は「扁桃の表面には小さなくぼみがあるが、炎症をくり返していると、くぼみに細菌と白血球が戦ってできた膿(うみ)が詰まって白い固まりの膿栓を作る」と話す。大人でも、喫煙者などで扁桃に慢性的な炎症がある人はできやすい。

膿栓の対策について「毎日、水道水でうがいするほか、扁桃炎の予防にビタミンCを十分にとってほしい」(生井院長)。自己流でつまようじでほじったり、シャワーの水をあてる人もいるが、「くぼみを広げてしまい再発しやすくなる」と話す。できやすい人は耳鼻咽喉科で膿栓の吸引やくぼみの洗浄してもらい、原因となる扁桃炎の治療を受けよう。

■大人に多い舌苔

成人の口臭の主な原因は舌の表面にできる舌苔(ぜったい)だ。舌は若い時は全体がピンク色で比較的滑らかだが、年齢とともに表面が不均一になって細かい溝ができ、色も白くなる。その中央部に細菌の固まりがコケのように貼り付いたものが舌苔で、強い悪臭を発することがある。

さらに40代以降に進行することの多い歯周病も口臭の原因となる。歯周ポケットのなかで歯周病菌などが臭いの物質を作り、それが口内に排出されると口臭となる。

菌をうまく制御することが一番の口臭対策につながる。まず大切なのは、1日3度、毎食後の歯磨きとうがい。中川准教授は「歯周病の人は口臭を気にするが、毎日の歯磨きに加え、月に1回程度、歯科で歯のクリーニングを受ければ、歯周病は完治しなくても人に不快感を与える口臭はなくなる」と話す。

殺菌作用のある洗口液も菌のコントロールに役立つ。歯磨きの後で口をゆすぐといった使い方がいい。また、携帯用のマウスケア用品では、ポリフェノール類など口内の臭い物質と結びつき、口の外に飛び出さないようにする成分を含んでいるものがお薦めだという。

中高年で歯を磨いても治まらない人に効果的なのは舌磨きだ。舌苔を除去する道具には、舌ブラシ、へら状の舌スクレーパー、ガーゼなどがある。中川准教授の調査によると「口臭外来の受診者の8割は、舌磨きをしたことがあると答えているが、実際には十分に磨けておらず口臭も改善していないことが多い」。舌の表面の形は人それぞれで、使用中の器具が合っていないこともある。一度、歯科で使い方のアドバイスを受けるといい。

口臭は、口のなかのケアを正しく行えば、年齢に関係なく改善する。中川准教授は「高齢者の口臭は『しかたない』と放置されることもあるが、それが家族のコミュニケーションを悪化させることもある」と話す。家族みんなで口臭ケアに取り組みたいものだ。

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■自分は臭う? ストレス症状も

自分では気づきにくいだけに、臭っているのではないかと余計不安になる口臭。なかには実際は口臭がほとんどないのに不安な状態が続き、人が密集する場所に出るのが怖くなる「自臭症」を引き起こす人もいる。口臭外来では、人に不快感を与える口臭物質の揮発性硫黄化合物を専門機器を用いて測定し、数値化するよう試みている。

中川准教授は、患者に歯を磨かずに来院してもらって測定する。その後に正しい舌苔除去をして、数値がどう下がるかなどを見てもらう。「きちんと口臭対策法を身につけてもらうとともに、自分に自信をつけてもらう」と話す。不安解消にも役立っているという。

(ライター 荒川 直樹)

[日経プラスワン2015年7月11日付]

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