胆石症になりやすい4つの「F」 対策は

胆のうの中にできた胆のう結石(胆石)は、無症状のまま年をとるとともに少しずつ大きくなっていくことが多い。近年、患者の体の負担の小さな手術が普及したことで、胆石が原因で起こる「胆石発作」や「胆のう炎」のリスクが高い人を早く発見し、積極的に治療を行うケースも増えてきた。

食べたものを消化する仕組みの中で重要な働きをするのが胆のう。肝臓で胆汁という消化液が作られ、総胆管という管を通って十二指腸で分泌されるが、胆のうはその途中にある袋状の臓器。胆汁がためられ、食事の時にタイミングよく縮んで放出される。

■胆汁成分固まる

胆汁の成分が途中で固まり石のようになる病気が胆石症で、肝臓のなかにできる肝内結石、総胆管にできる総胆管結石、胆のう結石がある。神楽坂DSマイクリニック(東京・新宿)の川崎篤史院長は「戦後、食事の欧米化とともに日本人に増えているのが、胆汁に含まれるコレステロールが固まった胆のう結石。10人に1人が胆石を持っている」と話す。

胆石症になりやすい人の特徴を示すのが4つの「F」。「40代以降の中高年」「肥満の人」「女性」「多産婦」だ。女性に多い理由はよく分かっていないが、更年期を境に女性ホルモンが低下して、脂肪分解の力などが変化するからではないかと考えられている。

典型的な症状は「身をよじるほど痛い」といわれる胆石発作。食後、とくに脂っこいものを食べた後に、みぞおちや右上腹部に激しい痛みを生じるが、数時間すると軽くなり消えることが多い。

ただ、実は胆石があっても典型的な症状を示す人はそれほど多くない。川崎院長は「食後の胃もたれ、便通がおかしいといった不調の背景に胆石が隠れていることがある」と話す。多くの人は、症状がないまま推移し、健康診断などで発見されることも多い。

こうした「潜伏する胆石」に専門家が注目する理由は、命にかかわる病気の原因になるからだ。日本大学病院消化器外科の松田年(みのる)外来医長は「総胆管や胆のうは、多くの細菌が住む消化管につながっているので、常に感染のリスクにさらされている」と話す。

胆石がある人は、細菌が原因で起こる急性胆のう炎にかかりやすい。発熱、嘔吐(おうと)などが起こるだけでなく、炎症で胆汁がうまく流れなくなり、血液に入って黄疸(おうだん)になることもある。この時に細菌が一緒に血液中に流れこむと、全身で炎症が起きる敗血症になる。

■エコー検査を

急性胆のう炎になると長期間入院となることも多いほか、高齢者では命を落とすリスクも高い。胆石がないかどうか、早めに調べておきたい。特に腹部エコー(超音波)検査が大切だ。松田外来医長は「腹部エコー検査は、肝臓、胆のう、すい臓などを検査できる。40代になったら脂肪肝の有無を含め、一度受けておいてほしい」と話す。

治療は手術が中心。専門家が検査を薦める理由の一つは、体の負担の少ない胆のうの腹腔(ふくくう)鏡手術が進歩し、胆のう炎などのリスクが高い患者では、胆のうを切除する治療を選択しやすくなったからだ。

切除した方がよいのは、胆石発作をくり返す人、胃もたれなどの不調で生活の質(QOL)が低下している人だ。松田外来医長は「胆のうの機能が低下していると、細菌感染が起きやすい」と話す。消化器外科などの専門医と相談して決めることが大切だ。

リスクがそれほど高くない場合でも、生活改善を行いながら経過を診る必要がある。川崎院長は「できた胆石を小さくするのは難しいが、症状を改善するためのポイントは複数ある」と話す。

胆石の予防としても心がけたいのが肥満の解消だ。ウオーキングなど軽度の運動を毎日続けることが重要だ。戦後に胆石症が増えている原因と考えられているのが高脂肪、高カロリーの食事。動物性の脂質の取りすぎは胆のう結石の原因となる血中コレステロールを高くする原因にもなるので、バランスのよい食事を心がけたい。

規則正しい食事習慣も重要だ。胆のうは、食事のたびに収縮をくり返す。睡眠中は収縮しない上、朝食を抜くと胆汁の流れが滞る原因になる。また、就寝前に遅い食事をとることも機能低下につながりかねない。

身近な病気である胆石症の早期発見は、中高年以降の健康リスク管理の重要なポイントになりそうだ。

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日帰り手術も可能に

川崎院長は「胆石症は治療の緊急性が低い病気なので、できるなら長期間仕事を休まずに治療したいという患者が増えていることも腹腔鏡手術が普及している背景の一つ」と話す。患者の体の状態が良ければ、一泊入院での治療や日帰り手術を行う医療機関も増えてきている。

ただ、手術にはリスクもある。例えば総胆管など目的以外の臓器や血管を傷つけてしまう場合。また腹腔内に炭酸ガスを充満させて手術を行うため、ガスが循環器に影響を与えたりすることもある。放置しても平気かどうか、治療をするメリットとリスクを医師とよく相談の上で選択することが大切だといえる。

(ライター 荒川 直樹)

[日経プラスワン2015年6月13日付]

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