寄生獣 完結編
人間の獣性 あらわに
人間の脳に寄生して生きる謎の生物を描く岩明均の漫画をVFX(視覚効果)の第一人者、山崎貴監督が映画化した2部作の後編。
高校生の新一(染谷将太)の脳に入り込むのに失敗し、右手に寄生したミギー(阿部サダヲ)。前編は町で増殖する寄生生物に母を食い殺された新一がミギーと共に、高校で寄生生物との死闘を繰り広げる。寄生生物のVFXに驚くが、ここまでは物語の序章にすぎない。後編で初めて、人類と寄生生物の対決という文明論的な構図が示される。
人間になりすました寄生生物は市役所を根城に組織を作りあげる。寄生生物狩りをする新一は敵視されるが、寄生生物のリーダーで知能の高い田宮良子(深津絵里)は手出しを禁じる。田宮は人類と寄生生物の「共生」の事例として新一とミギーに注目していた。
一方、人間側も寄生生物壊滅を目指し、特殊部隊を結成。アジトである市庁舎への突入を準備していた。
寄生した人間の子を出産し、寄生生物にはなかった母性に目覚める田宮の意思に反し、寄生生物の組織化を進める市長や武闘派の寄生生物は新一の命を狙う。逆に寄生生物に家族を殺された記者・倉森は田宮の正体を知り、追いつめる。
動物園での田宮と倉森の対峙と特殊部隊の市庁舎への突入という2つの場面が同時進行する。「私たちはか弱い生き物だ。いじめるな」と呼びかける田宮。その一方で市庁舎では寄生生物がえり分けられ、虐殺されていく。古沢良太と山崎による脚本は、2つの場面を交互に見せることで、緊迫感を高めると共に、組織の力を背景にした時の人間の獣性をあらわにする。
人間を食う寄生生物の出現。それはあらゆる種の上に君臨する人類の尊大さに対する地球という生態系からの警鐘ではないか。そんな深遠な世界観を、山崎は緊密なドラマで描き出す。1時間57分。
★★★
(編集委員 古賀重樹)
[日本経済新聞夕刊2015年5月1日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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