快走導くコーチはアプリ 距離記録や練習プラン作成
「次のマラソン大会に向けて走り込んでいます」。はとバス(東京・大田)の石川祐成さん(51)はこう語る。5年ほど前にランニングを始めた。最初はすぐ足が止まっていたというが、今ではフルマラソンの大会に挑戦するまで上達した。
石川さんが練習時に使っているのがナイキのアプリ「Nike+Running」だ。走った距離や時間、場所などを記録する。全地球測位システム(GPS)で走ったコースのデータを取得、地図上に表示する。1キロメートルごとに走ったペースも分かり、遅い地点は赤色の線、速い地点は青色の線で示される。「これを見て走るペースを細かく修正できる」(石川さん)
競い合ってやる気に
アプリの画面には走った距離が次々と積み重なっていく。ナイキジャパン(東京・品川)の臼井紀子さんは「自分が頑張った分が目に見えると、気持ちを高めてくれる」と指摘する。
ランニングは仲間と走ることで続けられるときもある。そのためのしかけをいくつか用意している。一つがアプリの利用者同士が参加する「チャレンジ」機能で、期間を決めて走る距離を競い合う。参加者は互いに走った距離を共有し、ゲーム感覚で楽しんで走れるようだ。
ナイキは9日にアプリの機能を拡充した。GPS機能付きの時計や心拍数の測定機器などを世界で販売している4社との連携がポイントだ。GPS機能付きの腕時計は距離や時間を記録し、スマホを持たずに走ってもアプリと同期できる。心拍数は走っている状態で体にかかる負荷が分かる。いずれもランナーの関心は高いという。
「今日は5キロのジョギング」「明日は7キロ」――。これはアシックスのアプリ「MY ASICS」が作成したトレーニングプランだ。自社のスポーツ研究所で積み重ねた科学的なデータを基に、その人の力量や、練習に当てられるスケジュールも考慮し、無理のないプランをアプリが自動で組み立てる。
目標と大会時期を指定
利用には、まず、フルマラソンやハーフマラソン、5キロなど距離を選んで目標タイムを設定する。「3カ月後」など目標とする大会の時期も指定できる。そのうえで現在の自分のレベル、性別、年齢など各種情報を入力すると、自分に合ったプランが表示される。1日ごとに走る距離を示し、徐々に距離を長くして体を仕上げていく。
忙しい人は走る回数を減らして調整することも可能だ。プラン通りに走れない場合は、距離や回数を減らしたプランに変更できる。
プランをこなしてマラソン大会で目標タイムを達成したランナーは多く、アプリへの信頼は厚いという。「まるで自分専用のコーチが付く感覚になる」(デジタルマーケティングチームの三上恭子さん)。
ランニング向けアプリの多くはフェイスブックなどのSNSと連動し、ソーシャル機能が充実している。自分が走った結果を友人と共有して、互いにメッセージを送ったりできる。
オーストリア企業のアプリで世界的に使われている「Runtastic」は、走っている現在地を友人や家族に伝えてリアルタイムで声援やメッセージをもらえる。つらいと感じたときにも応援があれば乗り切れるかもしれない。
マラソン大会は各地で一年を通じて開催されている。自分に合ったアプリを探し、大会を目指してみてはどうだろうか。
(電子報道部 古山和弘)
[日本経済新聞夕刊2015年3月19日付]
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