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患者の「お金の心配」解消へ 社労士ら病院で相談会

2015/3/13 日本経済新聞 夕刊

治療の長期化などで金銭面に不安を抱える患者をサポートしようと、社会保険労務士やファイナンシャルプランナー(FP)など社会保険や年金制度の専門家が、病院で患者の相談を受ける試みが広がっている。障害年金の受給申請や生命保険の見直し、医療費や生活費の捻出方法まで助言する。患者らは「お金の心配が解消すれば前向きに治療に取り組める」と期待を寄せている。
社労士が病院の一室で、患者から相談をうける(2月、富山市の富山県高志リハビリテーション病院)

2月下旬、富山県高志リハビリテーション病院(富山市)で県社労士会が開いた「障害年金相談会」。年金制度の知識が豊富な社労士8人が訪れた相談者と向き合った。

約4カ月入院している同県氷見市の自営業の男性(48)は「家族もいて生活が苦しい」と訴えた。男性は治療の合併症で車椅子での生活を余儀なくされている。女性社労士は「障害年金2級を受給できる可能性がある」と言い、受給条件などを説明した。

■煩雑手続き紹介

障害年金は公的年金の一つで、基準を満たした人は最低年約58万円をもらえる。県社労士会の池田悦子年金相談センター長は「あまり知られておらず、医師の診断書など最大約10種類の書類が求められるなど手続きも煩雑。必要な人が受給できていないことがある」と話す。

県社労士会は県内の病院で年約5回、こうした相談会を開いている。1年間に計約100人が利用しているという。全国社労士会連合会(東京)によると、石川県と兵庫県などではがん患者を対象に、愛媛県では肝炎患者を対象に、それぞれ県社労士会が就労支援相談を実施している。

連合会の担当者は「社会保険や労働法の専門的な知識を持つ立場から、公的・私的制度を活用して患者さんの治療や生活の支えになりたい」と話す。

「夫が慢性腎不全となり今後の生活が不安」「難病で働けないが、子供の教育費をどのようにまかなえばよいか」。日本FP協会(東京)は昨年1月から月2回、日生病院(大阪市)で家計に関する知識を持つFPを派遣して患者らの相談にのる「金融コンシェルジュ」事業を続けている。

1回90分で、相談料はかからない。同病院の近石克也・地域総合医療窓口あったかサポートセンター部長は「この1年で約20人が利用し、患者からも役に立ったと好評だ」と話す。

相談では、最初に相談者の家計の月の収入と支出を確認する。その上で健康保険の傷病手当金や企業の健康保険組合独自の医療費補助を活用できないか検討する。支出を抑えるために低金利の住宅ローンへの借り換えや、民間の生命・健康保険の掛け金を減らすことなどをアドバイスする。

■退院後にも一役

同病院で相談を受けるFPでがんライフアドバイザーの川崎由華さんは「治療が長期になるがんなどの病気は金銭の不安が解消されれば、より前向きに治療にも取り組める」と話す。

2013年5月に始まった同事業では、14年9月までに日生病院や河北総合病院(東京・杉並)など5病院で計64人から相談を受けた。最も多かったのが「保険の加入・見直し」(20.4%)で、「相続」(19.3%)「生活設計全般」(17.3%)と続く。

同協会の高矢典明総務部次長は「治療や入院をきっかけに家計と真剣に向き合って計画的な金銭管理を心がけることは、治療後の人生にも役立つ」と話す。

◇            ◇

■「入院・手術費が心配」86% 民間調べ 自己負担に上限も

医療費に不安を抱く患者は多い。ライフネット生命保険が昨年、男女500人を対象にしたインターネット調査では、「もし入院するとしたら心配なこと」という質問(複数回答)に対し、86.8%が「入院や手術にかかるお金」と答えた。「入院期間」(63.2%)、「職場復帰ができるか」(37.4%)を大きく上回る。

保険適用の医療費では高額療養費制度があり、患者の月額医療費の自己負担額に上限を定めている。限度額は年収約370万円未満で約6万円、年収約370万~約770万円で約8万円、年収約770万~約1160万円で約17万円となっている。上限を超えた分は後で払い戻しを受けられる。

政府は今年1月から一定以上の所得の人の上限を引き上げる一方、低所得の人の上限を引き下げて負担軽減を図った。しかし通院や入院で会社を休むと収入が減る可能性があり、病院への交通費など医療費以外の負担もかかるため、患者の負担は少なくない。

(大西康平)

[日本経済新聞夕刊2015年3月12日付]

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