寺社めぐり、御朱印集めで楽しく
私だけの参拝記念品に
「墨の書の筆づかい、朱色の印のデザイン、そして、書と朱印の構成バランス。その絶妙な美しさに魅せられた」と話すのは、東京都江東区のIT(情報技術)企業に勤務する西川真理さん。御朱印の世界に、日本文化のよさを感じたという。
鎌倉などの寺社に興味があり、よく行っていたが、テレビ番組でこういう楽しみ方もあるのかと知った。たまたま知人と行った浅草寺(同台東区)で朱印所の案内を目にし、初めて御朱印をいただいた。楽しみが増えたという。
御朱印とは、寺社を参拝した証しに、持参した御朱印帳にいただけるもの。「本来、御朱印は、心に願うことなどがあって写経をし、それを寺院に奉納した証し」。豊川稲荷(豊川閣妙厳寺)東京別院(同港区、本院は愛知県豊川市)の僧侶・佐藤宏道(こうどう)さんはこう話す。「今は、参拝だけの方が多い。御朱印の意味を理解し、神仏にお参りして受けてほしい」(佐藤さん)。スタンプラリーとはまったく違うことを認識しておきたい。
昨年『新・かわいい御朱印めぐり』(山と渓谷社)を出版したフリーアナウンサーの三須亜希子さんは、御朱印歴7年以上。趣味の寺社めぐりをしていた際、御朱印を受けている年配の方を見て知った。「その場で、手書きというのがいい。自分だけのもの。日付も入り、記念になる」と言う。墨字と押し印に、各寺社の個性が出ているのも大きな魅力だそうだ。
寺と神社ではスタイルが違う。寺は、中央に墨字で本尊名。本尊がある建物名や庭名などで表す所もある。そして、押し印は本尊を示す御宝印だ。
一方、神社では中央に神社名の墨字と押し印。すっきりとした印象だ。三須さんのお気に入りの一つ「冨士山小御嶽神社」(山梨県富士吉田市)のものは「冨士山」の墨字が力強い。社紋や神社にちなんだ植物、動物、縁起物の印を押すところも。「かわいい印に出会うとうれしい」(三須さん)。パターンが違う寺社もあり、見開きのもの、お祭り限定のものもある。
佛教大学の八木透教授(民俗学、文化人類学)は、「巡礼の文化の流れもあり、年配の方が多かったが、若い人の寺社ブームで層が広がった」と言う。海外で筆づかいがアートとして注目されたことも影響しているのでは、と話す。
境内ではマナー守って
御朱印をいただくには、自分の御朱印帳を持参する。決まりはないが、三須さんは、寺と神社で分けている。最近は、かわいい表紙のものをおく寺社も。豊川稲荷東京別院では、千代紙柄のものが人気だ(1冊1200円)。
御朱印をいただく所は、朱印所や祈祷(きとう)受付など寺社による。御朱印代(お布施、初穂料)は300~500円程度が多い。
先に御朱印帳を預け、参拝中に書く寺社もあるが、参拝は大前提だ。礼儀を守った参拝をしたい。書くページを開いて渡すといい。待つ間は静かに。時間や都合で授与できない場合や混んでいる場合もある。御朱印を授与しない寺社があることも踏まえておこう。
「以前と書き方が変わることも。それもまた出会い」と言う三須さんは、御朱印を受けた後、可能ならば墨字や押し印の意味を教えてもらい、知識を深める。保管場所も決まりはないが、大切に扱いたい。
「札所めぐりや七福神めぐりのように、めぐりスタイルが、日本人の旅癖に合うのだろう」と八木さん。「写真よりも、価値のある思い出になる」と三須さん。寺社めぐりがより楽しくなりそうだ。
(ライター 小長井 絵里)
[日経プラスワン2015年1月17日付]
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