漆器でいつもの食卓を華やかに
和と洋 どちらにも合う
「スーパーで買ったチーズのおつまみセットやオリーブでも、漆器に盛れば、ちょっとおしゃれ。うち飲みも粋になる」と話すのは、いこまゆきこさん。東京都港区の自宅で他国の料理のエッセンスも加えた和食が人気の料理教室を開く。
使った漆器はお重箱とセットの取り皿。漆のつやと落ち着いた色が美しい。「しまいがちな漆器だが、普段にも使える」と言う。
「もうひとつおすすめは、ごはんを漆器の椀でいただくこと」(いこまさん)
1919年創業の漆器専門店・山田平安堂の代表、山田健太さんも「めし椀」を推す。東京・代官山の店には何種類ものデザインのめし椀(3500~1万5000円)が並ぶ。汁椀より口が広く箸が入れやすい。
「漆器は、持って軽く、熱くならず、手になじむ。器を手に取る日本の食文化。汁椀だけでなく、めし椀も一度、使ってみて」と話す。木製ならではのやさしさ。小学生の息子も、幼い頃から漆器のめし椀を使う。割れにくいのもいい。「選ぶときは、ぜひ手に取って、お気に入りのめし椀を見つけて」(山田さん)
いこまさんの料理教室に通う同大田区の吉岡磨紀子さん(43)も漆器を普段の食卓で使う。朱塗りや、朱漆りの上に透漆を塗った溜(ため)塗りの小鉢をほぼ毎食、愛用。おひたし、冷ややっこなどはもちろん、ヨーグルトや果物など、いろいろ使えて便利と話す。
溜塗りの漆器は、深みのある落ち着いた茶の色合いが好きと言う。「使っているうちに味わいも変わり、より愛着を感じる」。カレーなどに使うスプーンも漆器。食器に当たる音も出ないし、口当たりもなめらか。おいしく感じるそうだ。
いこまさんも、漆器の小ボウルを小鉢替わりに多岐に使う。スープをよそえば、陶磁器とは違うほっこりとした雰囲気が出る。また、鍋ものの取り鉢に、持って熱くなく口当たりのいい漆器はうってつけだ。
デザインはシンプルなものが人気。和と洋のどちらのシーンにも合い、いつもの洋食器やガラス器と合わせやすい。「百貨店では、洋食器と和食器の間に配置されることが多い」(山田さん)。日常使いするものなら、手ごろな価格なものから取り入れるのもいい。
重箱でもてなし感演出
ホームパーティーなど特別なシーンにもぜひ利用したい。洋風の料理が並ぶ食卓に、漆器を1点入れると、ぐっとモダンに。もてなし感が高まる。漆器の黒はむしろ洋食器と合う。「とくにガラス器との組み合わせは美しい」(山田さん)。朱塗りの赤は華やかだ。
重箱に彩り美しく詰められた野菜サラダは、いこまさんの料理教室で作ったもてなし料理。フラワーボックスのようだ。ローストビーフもごちそう感が高まる。ふたを開けるときの驚きも楽しい。
気になるのは取り扱い。面倒なイメージがあるが「酸のものや油ものの料理も大丈夫で幅広く使える」といこまさん。洗うときも特別な気づかいはないという。軽いから扱いもラクだ。
山田さんにお手入れ方法を聞いた。食器洗浄機は使えないが、食器用洗剤(研磨入りは除く)とスポンジで洗っていい。ちょっとの漬け置きも可能。洗ったら早めに拭けば、水滴の跡がつかない。「漆は塗料。普段使いの漆器ならざくざく使う感覚で」と話す。
漆器は情緒的なところがいいと山田さんは言う。「食卓がより豊かになる」といこまさん。普段から漆器のよさを楽しみたい。
(ライター 小長井 絵里)
[日経プラスワン2014年11月29日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。