失敗しないオーダー家具 まずは部分注文から
まずは部分注文から
「希望通りのデザインだし、背面の配線も我が家仕様できれいに収まった」。横浜市に住む30代の高橋美果さんは満足そうだ。初めてのオーダーで薄型テレビを置くボードをあつらえた。前面ガラス扉に白系のフィルムを貼ることで収納したAV機器を目立たないようにし、ボードの接地部も工夫して宙に浮いたような凝ったフォルムにした。
設計を担当したインテリアコーディネーターとのやり取りは既製品を購入する際にはない過程だが「楽しい作業で、苦にはならなかった」。あまりに高価であきらめていた輸入家具を思わせる一品が、3分の1以下の価格で手に入った。
家具のオーダーが身近になってきた。インテリアへの関心の高まりが背景で、特に30~40代が意欲的だ。ただ自分たちの住空間にマッチする理想の家具が手に入るとはいえ、既製品と比べて大幅に割高になるのでは……。そう二の足を踏む人には、基本のデザインのサイズや使い勝手だけをオーダーで変えられる手法がある。まずはこうしたセミオーダー的な手法に挑戦するのも手だ。最初からデザインを起こすフルオーダーに比べて、家具オーダーがぐっと身近になる。
東京都台東区の家具専門店「ウッドワーク」は、2011年秋から"相談式収納家具"と銘打ったセミオーダー家具のシリーズ「TANA」を展開している。書棚、食器棚などの収納家具を無垢(むく)材でつくるが、部材の共通化やそれに伴う見積もりの簡素化で価格を抑えている。ウェブ中心に情報を発信し、これまで100件を超える受注があった。
「使っている収納の困っているところなどを聞き取り、図面を引きます」と同店の杉島暢子さん。元となるカタチに扉や棚板、引き出しや取っ手などの部品を追加し、暮らし方、置き場所やしまう物に合わせて製作する。たとえば幅85センチ、奥行き45センチ、高さ190センチの「最もシンプルな本棚」は19万円ほど(税抜き)。「無垢のオーダー家具としては高くないです」(杉島さん)。
良品計画の生活雑貨店「無印良品」もオーダーに力を入れている。10年に始めたテーブルやデスク、ベンチなど無垢材家具のオーダーは、1センチ単位でサイズ変更が可能だ。生活雑貨部の依田徳則さんは「オーダーをはじめ専門知識を持つインテリアアドバイザーを大型店を中心に増やしている。きめ細かい対応を心がけている」と話す。
大きいほど割安な傾向
オーダー家具を受け付ける設計会社、ホームデザイン(横浜市)の代表でインテリアコーディネーターの雨森博子さんは「今ある家具、今の室内に合わせてオーダーする人が増えている」と話す。居間のテレビボードにデザインの方向性や色味を合わせて本棚やパソコンデスクをつくれば、一体感がある空間になる。
重要なのは打ち合わせだ。雨森さんの場合は「まず来社してもらって1時間半は聞き取りをする」。明確なイメージがなくても、専門家が生活様式や好みなどを聞くことでプランを練り上げることが可能だ。
打ち合わせ後1週間ほどでプランとともに概算価格が示される。やはり無垢材が人気だが、色や素材に限りがあり価格も高いので、バリエーション豊富な化粧板を検討するのもいい。
あとは価格。既製品は1個単価の積み上げだが、一括受注するオーダーは工賃や素材との見合いで大きな家具ほど割安になる傾向があり、既製品より安くなるケースもあるという。雨森さんは「生活しやすく、きれいに片付くオーダー家具を生かしてもっと生活を楽しんで」と話している。
(編集委員 天野賢一)
[日経プラスワン2014年11月8日付]
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