社内改革反発で4割退社 「うるさい社長」理念ぶれず石坂産業 石坂典子社長(上)

石坂産業社長 石坂典子氏
石坂産業社長 石坂典子氏

「公害企業は地域から出ていけ」。住民の横断幕が工場を取り囲む。父親が興した産業廃棄物処理の石坂産業(埼玉県三芳町)は、風評被害で存続の危機にあった。「世界で一番、人から愛される会社に変わろう」。後を継いだ石坂典子社長は高い理念を掲げて社員の意識を変え、やる気を引き出す。反発する社員の大量退社も乗り越え、環境共生のモデル企業と呼ばれるまでになった。

――良いリーダーの条件とは何でしょう。

「ちゃんと先を見すえている人じゃないとダメでしょうね。あとは、ぶれずに芯があり、誠実であることでしょうか。私の父がそうでした」

「毎期の売上高も大事です。でも社員はリーダーの口から、未来の話こそ聞きたいのではないかと思うのです。想像できないような遠い先に、世界はどうなっているか。自分たちはどんな役割を果たせるか。単に会社の将来の話だけでは、若い人たちは自発的に動いてくれません」

社長就任前に社内で社員と(2000年ごろ、右が石坂さん)

「この人は何をしたいのだろうと、リーダーは日々、社員から人間性をみられています。責任感はもちろん必要ですが、それだけではリーダーはできない気がします。事業への前向きな使命感をもっているかどうかが大事ではないでしょうか。それと情熱です。どれが欠けてもリーダーは難しいと感じます」

――小さいころからリーダー気質だったのですか。

「自分では、人を引っ張る役回りは今も向いていないと思っています。でも振り返ると、小学生の頃から周りに『あんたやりなよ』と推されて学級委員などをやっていました。せっかちで、おかしいことはおかしい、私はこうしたいなど、手を挙げて意見を言っていたので、向いていると見られたのかもしれませんね」

――社長就任も想定外だったのですね。

「高校卒業後、米国の大学に留学したけど中退し、ネイルサロンを開こうとイベントコンパニオンなどをしていました。父の会社に就職したのも貯金をするため。しかし1999年、民放テレビ局が隣接する所沢市で『産廃工場から発生したダイオキシンで農作物が汚染されている』と報じ、すべてが変わりました」

「実は間違った報道だったのですが、当時は『同業の石坂産業も危険だろう』と住民から撤退を迫る行政訴訟を起こされ、本社前に監視小屋ができました。その数年前、父は年間売上高の半分を超す15億円をかけダイオキシン対策をした最新鋭の炉を入れていたのですが、説明してもわかってもらえません」

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