改革に社員反発、退社も

「学級委員に戻ったようです。私は30歳、社員の多くは40~50代。職場が窮屈になり面白くなかったと思います。しかし私は必死でした。取引先に会社が変わったことを客観的に証明するため環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001、品質マネジメントシステムの同9001、労働安全衛生マネジメントシステムの同45001を取得すると決め全社に発表しました」

「細かいルールや手順が増え、覚えることも多く、社員には負担となります。朝礼で方針を語っている時、ヘルメットを床にたたきつける音がしました。1人の社員が、こちらをにらんでいます。私がじっと見返すとその人は目をそらし、立ち去りました。何人かの社員がそれに同調して出て行きます。改革を始めて半年間で社員の4割が退社していきました」

――ほかの社員は理解してくれたのですか。

「大半の社員は辞めないまでも『大丈夫かよ』と冷ややかに見ていたと思います。ISOの社内講習会を開けば、出席はしても皆、眠っています。そのため先生役を明るい女性講師に替えました。私は小さいころから職人さんと過ごし、彼らが若い女性には優しいと知っていたからです」

「父のようなカリスマ性のある創業経営者なら、社長が決断すれば社員がついていくのがふつうです。しかし私はその子供というだけです。しかも女性で、職人の経験もありません。経営的にも主力事業をやめドン底からのスタート。相手にされなくて当然でした」

「経営者の仕事は社員に愛されることではありません。会社を存続、発展させることです。そう考え、理念がぶれることはありませんでしたが、私の顔をみると『うるさい社長が来た』と社員が逃げ出す状況が続きました。しばらくは悲しい思いをしましたね」

(編集委員 石鍋仁美)

■職人の仕事に関心
いしざか・のりこ 1972年東京都生まれ。92年石坂産業入社、2002年社長に。父の好男氏から継いだ産業廃棄物処理の会社を、国内外からの視察も多いリサイクルの先進企業に変身させた。
 多趣味を自任する。しかも「男性っぽい趣味が多い」。大量生産品より手づくり品や古びたものを好む。染め物や陶器などこの世に1つだけのものや、人の手で再生されたものにひかれる。「かごを編む職人の仕事姿などを見ると、かっこいいなあと思う」そうだ。

[日本経済新聞夕刊 2021年9月9日付]

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