メルカリCEO、女子中学生に奨学金 理系での活躍支援

メルカリの山田進太郎最高経営責任者(CEO)はこのほど、ジェンダーギャップの解消などを目指す「山田進太郎D&I財団」を設立した。2022年度から国内の高校理数科などに進学する女子中学生100人に奨学金を支給する。設立の狙いを聞いた。
――D&I(ダイバーシティとインクルージョン=多様性と包摂)がテーマの財団を設立した背景は。
「メルカリでもダイバーシティには以前から取り組んでいた。外国人の採用・登用は進んだが女性はなかなか進まない。エンジニアの女性はそもそも2割ぐらいしかおらず、大学時点でも理系の女子学生は極めて少ない。理系で活躍できる女性はもっと大勢いると思うが、中学や高校の段階でなんとなく諦めてしまう。理系に進学するとマイノリティーになるから嫌だという負の連鎖のようなものもある。早い段階での働きかけが必要と考えた」
――第1弾として女子中学生に奨学金を呼びかける。
「まずはわかりやすく高校進学時点で理系を目指す人を対象とした。進学先は全国で300校程度だが、小さくとも確実にニーズがあるところから始める」
――今後、どのように活動を広げていくか。
「在学中のサポートは必要だろう。オンラインコミュニティーやリアルイベントも考えている。STEM(科学、技術、工学、数学)分野に女子学生が少ないのは構造的な問題だ。理系の先生にもっと女性が必要だし、社会のバイアスもある。大学関係者やNPO団体と連携しながら多面的に取り組み、理工系の女子大学生比率を現在の18%程度から35年に28%まで高めたい」

――理系分野に女性が増えることで何が変わるか。
「理系で活躍する女性に話を聞くと『好きなことをやっていたら今、ここにいた』という感じだ。メルカリの女性エンジニアも仕事を楽しみながらきっちり稼いでいる。学生らがさまざまなロールモデルと接点を持ち『理系いいよね!』というムーブメントを作ることができれば、それがティッピングポイント(転換点)となる。エンジニアに限らず建築家や医師など、だれもが自由に進路を選び、能力を発揮できるようになる」
――多様性は企業の成長につながるか。
「つながると思う。メルカリのエンジニアは約半分が外国人だ。色々な意見が出て、それが客層の広がりとリンクしている。同質化した組織では世界の多様なニーズには対応できない。新しいサービスは常に求められており、会社としてもD&Iの取り組みに一層力を入れている」
(聞き手は編集委員 中村奈都子)
[日本経済新聞朝刊2021年8月30日付]
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