
共働き世帯数は2020年に1240万世帯と40年間で2倍になった。女性の社会進出が進む一方で、家事や育児負担が女性に偏る現状は変わらず、少子化の一因になっているとの指摘もある。50年以上、協力しながら仕事を続けてきた産婦人科医の堀口雅子さん(91)・貞夫さん(88)。共働き夫婦の先輩である2人に、仕事と家庭の両立の秘訣を聞いた。
雅子さん「仕事を始めて60年、情熱が尽きたことはありません。結婚や子育てを経験しても、仕事を離れようと思ったことは一度もないわね」
「病弱だった幼少期、入院先で治療にあたってくれた医師の姿に憧れたの。『女性医師は働き口が少ないよ』と周りから勧められて、高校卒業後、東京薬学専門学校(現東京薬科大)に進学しました。でも諦めきれず卒業後に群馬大医学部に入り直したの」
雅子さん「夫は、患者さんへの接し方が誰よりも優しかったのを覚えています。患者さんへの態度でその人の本当の性格が分かるのよ。女性を一人の人間として、後輩として認めてくれていたところも良い点でした」
貞夫さん「妻にひかれたのは、男性が多い中でも対等に働く姿だったな。当時から、結婚する相手は働き続けている人が良いと思っていました。社会を見るメーターを持っている人だからこそ、結婚生活でも対等に何でも話し合えるんです」
雅子さん「結婚後も働きたい私にとって、理解のあるパートナー選びは重要。仕事ぶりを見て『きっとおおらかな人だろう』と確信していたけれど、慎重に慎重を重ねたわ。本当に良い人か見極める時間として、結婚後も3カ月程度は避妊をしていたほどです。高齢出産をしたときも、当たり前のように働き続けようと思いました」
貞夫さん「僕は働き続ける女性と結婚したいと思った以上、女性が家庭に入るべきだとは最初から思っていなかった。子どもができてからは自然と僕が朝ご飯担当になりました。学生時代もほとんど自炊していなかったから最初は探り探りだったけど、目玉焼き、ごはん、パン……と組み合わせてローテーションを組めば、妻や子どもたちも飽きることなく満足してくれました。『おいしい!』と褒めてくれたから、じゃあ今度はもっと工夫しよう、とやる気につながって」
雅子さん「子どものお迎えは交代制だったんだけど、うっかり当番を間違えてどちらも迎えに行かず、保育所に叱られたこともあったわね。家に帰ってきたら『あれ、息子はどこにいるの?』と。お互いにあの時は大慌てでした」