黒人・アジア系への差別意識 移民の国・米社会の分断成蹊大学教授 西山隆行

バイデン政権による差別是正の取り組みにも注目が集まる イラスト・よしおか じゅんいち
バイデン政権による差別是正の取り組みにも注目が集まる イラスト・よしおか じゅんいち

米国でジョージ・フロイド氏が警察官による不適切な拘束の結果死亡してから1年以上経過した。ブラック・ライヴズ・マター(BLM)運動が全米に広がる中、アジア系に対するヘイトクライムも増加し、分断が深まっている。

サミュエル・ハンチントン著『分断されるアメリカ』(鈴木主税訳、集英社文庫、2017年)は、自由、平等、民主主義、個人主義、法の支配など、建国者たちが確立した米国的信条を、中南米系移民や多文化主義思想が掘り崩していると警鐘を鳴らした問題作だ。だが今日では、ハンチントン的なアングロサクソン中心主義、西洋中心主義の見方がマイノリティーへの差別を生んでいるのではないかとの批判もされるようになっている。

貴堂嘉之著『移民国家アメリカの歴史』(岩波新書、18年)は、ヨーロッパ系移民を中心に語られてきた「移民の国」アメリカの歴史を、近代のグローバル・ヒストリーの中に位置付け、アジア系移民の歴史的経験からとらえ直そうとする試みである。ニューヨークのエリス島がヨーロッパ系移民を米国に帰化させるための施設だったのに対し、アジア系の玄関となったエンジェル島はアジア系移民を制限・拘留して帰化を阻止する性格を持っていたなど、興味深い指摘が多くなされている。

制度への問題提起

アジア系はしばしばモデル・マイノリティーと称され、優秀ながらもアメリカ的ではないという見方がなされている。このような差別的な意識が、昨今のヘイトクライムにつながっているのではないだろうか。

他方、アメリカ的ながらも優秀でない存在と位置付けられて差別を受けているのが黒人である。黒人への人種差別は刑事司法と密接に関わっている。

映画化もされたブライアン・スティーヴンソン著『黒い司法』(宮崎真紀訳、亜紀書房、16年)は、ハーバード大学法科大学院を出た黒人の弁護士が、南部アラバマ州で黒人の冤罪(えんざい)を晴らすために活動する様を記録したノンフィクションだ。差別主義的な地域の黒人が、警察や裁判所、そして人種差別をどうとらえているかが、生々しく伝わってくる。

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