凄惨な戦争に思い巡らせる数々の名著 富士石油会長富士石油会長 柴生田敦夫氏

しぼおた・あつお 1954年東京都出身。東大法卒、通産省(現経産省)入省。貿易経済協力局長、財務省関税局長。14年から富士石油社長、21年6月から現職。
しぼおた・あつお 1954年東京都出身。東大法卒、通産省(現経産省)入省。貿易経済協力局長、財務省関税局長。14年から富士石油社長、21年6月から現職。
歴史を記録したフィルム、ドキュメンタリーが子供の頃から大好きで、それが本への興味につながりました。

まだ戦後15年ほどだった小学校時代は、毎年8月になると映画、本・雑誌、テレビとも「戦争特集」でした。鮮烈に覚えているのは、フランキー堺の主演でC級戦犯を扱ったテレビドラマ「私は貝になりたい」です。上官の命令で捕虜を刺殺した理髪店主が戦後、逮捕・処刑されるまでを描いてます。

戦争に関係する映像や映画、書籍への興味の源はこの辺りにあります。最近も第1次世界大戦、多数の犠牲者を出したナチス・ドイツとソ連の凄惨な戦いなどに思いを巡らせています。

ヒトラーのナチスによる民族虐殺の問題ではジャーナリスト熊谷徹の『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』が印象的でした。戦争中に被害を与えた国から歴史認識について批判され、外交・経済関係に悪影響が及び、国益が損なわれることがある。これを「歴史リスク」と名付けています。

一方、ナチスに勝ったソ連も反体制派をとことん痛めつける非人間性へと向かいます。大学の時に読んだソルジェニーツィンの『収容所群島』の衝撃は大きかったです。

映像絡みでは、同じ頃に出合った佐藤忠男の『世界映画一〇〇選』が、南部僑一郎との共著である『日本映画一〇〇選」と共に好きです。単なる映画紹介にとどまらず、文化や思想に鋭く切り込んだ評論を道しるべに、何度となく映画館に足を運びました。ドイツ占領下のフランスで撮影された大作「天井桟敷の人々」は圧巻でした。

社会人になってからは、本は仕事の良き伴走者でもありました。

通産省(現経産省)時代の厳しい対米交渉の最前線で頼りにしたのは和英の口語辞典です。米ワシントンの日本大使館への赴任後、クリントン政権が誕生すると対日貿易赤字の削減が主要な政治課題になります。様々な貿易協議で自動車と半導体分野は力の入れ方が特別でした。なかでも半導体は1980年代半ばに国務省、通商代表部(USTR)、商務省が3者そろって高官を出してきたのは驚きでした。その後、曲折を経て95年に自動車で合意、96年に半導体も交渉が終結しました。

協議の場は真剣勝負だけに厳しい質問も多く、米側に発想や意図を上手に伝える英語表現に苦労しました。有名な英語通訳者、松本道弘の著書には助けられました。四半世紀を経て米中の間で半導体が最大の焦点となっています。後に中国・北京で仕事をした経験もあるため感慨深いものがあります。

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