危機下ではトップダウン、社長の力で「ワンチーム」にアシックス 広田康人社長(下)

アシックス社長 広田康人氏
アシックス社長 広田康人氏

アシックスは歩幅を広げる厚底ランニングシューズを3月に発表した。広田康人社長は「社長直轄のプロジェクトを立ち上げ、スピード開発を意識した」と明かす。厚底で先行するナイキに後れを取っていたが、東京五輪・パラリンピックの開催に合わせて商品をそろえ反転攻勢に打って出る。危機下で各部門をまとめあげるには「上が決めたことを下に徹底させることが重要だ」と述べる。

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――2020年以降、新型コロナウイルスでスポーツ用品店は臨時休業を余儀なくされました。

「コロナ下で需要が弱含みになったことを受けて、矢継ぎ早に生産調整をかけました。こうした緊急事態では何をすべきかを決め、決めたらすぐに手を打つことが重要です。手元資金を確保するために銀行借り入れを増やし、社債に切り替えました。あとは何よりも社員の健康と安全を守ることに務めました」

――危機対応の一方、厚底シューズ「メタスピードシリーズ」プロジェクトを社長直轄で進めました。

「ランニングシューズではナイキに水をあけられていました。典型的だったのは今年の箱根駅伝です。我々のシューズを履いてくれませんでした。挽回するため、スピードを重視して社長直轄で開発しました」

「ポイントは部門横断です。研究、製造、マーケティング、知財など、各部門から人を集めてチームを作りました。それぞれの部門に責任者がいるため、部門ごとに進めていたらもっと時間がかかっていました」

――東京五輪では国内最上位のゴールドスポンサーを務めています。新製品の開発は必達の目標でした。

「1年延びて猶予をもらったのは確かですが、間に合わせるために全社を挙げてベストを尽くしました。メタスピードシリーズは世界のアスリートが履いてくれるという手応えがあります。近年のアシックスはこういうシューズを開発できていなかった。(スポーツウエアを街着として着る)アスレジャーの流れに中途半端な乗り方をしていた時期は、みんながびっくりするような商品は出せていなかったと思います」

――部門横断の場合、各部門の縄張り意識もあってまとめるのが大変です。

「それをまとめるのが社長の力だと思います。良いシューズを作りたいという強い思いを持ったメンバーを集めました。もともとの担当は関係なく、ひとつのチームとして取り組んだ結果です。危機下ではリーダーシップのあり方も変わりますね。いつもは議論しても、危機下では『決めたことは守ろう』と伝えます」

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