率いていた日興プリンシパル・インベストメンツで不正会計問題が発覚し、責任をとって会社を辞める。

「会社をクビになり長編小説を読む時間ができました。『待て、而(しか)して希望せよ』という言葉が心に染みたのが『モンテ・クリスト伯』です」

「失業中も朝起きる習慣を続けるため、日中学院の早朝コースで中国語の勉強を始めました。『論語』の勉強会で出会ったのが守屋淳先生です。仕官の願いがかなわない中、社会を恨まず自らを諭す孔子の『人知らずして慍(いきどお)らず、また君子ならずや』という言葉には、はっとさせられました」

KKR共同創業者のヘンリー・クラビス氏とジョージ・ロバーツ氏はたびたび「推薦書」を送ってくる。

「ヘンリーは、自身も親交がありその理想主義に影響を受けたというキッシンジャーの『外交』や『キッシンジャー回想録 中国』などの原書を送ってきます。大きな視点に立って、世界の動向を読む際の参考になります」

「長期投資のプライベート・エクイティ投資は、次に何が起きるのか未来を読む仕事でもあります。そのために歴史に学べとヘンリーやジョージからよく言われます。ウォーラーステインの『近代世界システム』は国や地域の覇権争いの歴史をひもときます。覇権の変遷をたどりながら、脱炭素でゲームチェンジを仕掛けようとする今の欧州の狙いに思いをはせたりします」

「大学時代に心理学科の行動科学を専攻し、人の行動を変える方法論に昔から関心があります。リチャード・セイラーらの『実践 行動経済学』は、ファンド投資先のステークホルダーに行動変容をどう働きかけるかのヒントに満ちています。『交渉は勝ち負けではない』という考えを解説した『交渉の達人』は、うちの社員の必読書に指定しています。交渉に臨む際の視点が大きく変わります」

(聞き手は編集委員 川崎健)

[日本経済新聞朝刊2021年7月3日付]

ビジネス書などの書評を紹介