2021/6/28

パナソニックシステムソリューションズジャパン(東京・中央)は19年度にカフェテリアプランを使い年間8万円まで治療費を補助する制度を始めた。だが初年度の利用者はゼロ。「申請すると上司に治療中だと知られてしまうという不安の声が上がってきた」(人事部)。20年度に承認先を人事担当者のみに変更し周知したところ、利用者が徐々に増えているという。

出産や子育て支援の公益財団法人「1more Baby応援団」(東京・港)は、3月に行った調査で治療経験者など535人にどんなサポートがあると治療をしやすいか(助成金、保険制度以外、複数回答)を聞いた。最も多かったのは「勤務先での上司、同僚などの理解」(58%)。次いで「有給休暇をいつでも取得できる風土」が53%と、「休暇制度や時間単位の休暇」(48%)を上回った。

対話通し「使える制度や働き方を一緒に考える」

社内の理解を醸成し休暇を取りやすい風土をつくるカギは何か。「身近に利用者がいることで、徐々に利用者が増えていく」と話すのは富士フイルムビジネスイノベーション(旧富士ゼロックス)人事部の福田殊和氏だ。同社は最長1年の不妊治療の休職制度を12年に導入し累計30人以上が取得した。

治療で休職した社員には「他の人が利用したと聞いて取得した」という声も多いという。休職する社員がいても代理の人員配置は基本的にない。それでも「お互いさまの意識で仕事をシェアできる」(福田氏)。

「対話が重要だ」と話すのは、05年に不妊治療の休職制度などを導入したオムロンの人財開発部ダイバーシティ推進課、上村千絵課長。不妊治療など私生活の課題との両立の相談を受ける窓口を設け、必要があれば上司とのコミュニケーションを仲介する。「活躍してもらいたいという会社のメッセージを伝え、使える制度や働き方を一緒に考える」(上村氏)。お互いに向き合うことが、当事者には両立を前向きに考え、会社には改善策検討のきっかけになるという。

治療中でもチャンスを与えて
 日本生殖医学会は23日、不妊治療に関するガイドラインの原案を発表した。今後、保険適用については中央社会保険医療協議会で議論される。一方、厚生労働省は従業員101人以上の企業に策定を義務付ける「次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画」に、盛り込むことが望ましい項目として不妊治療を受ける労働者への配慮を4月に追加。休暇制度などを整備した中小企業への助成金も新設した。

ただ「制度を作っただけでは伝わらない」(ファミワンの石川勇介社長)。リプロキャリアの平氏は「治療中でもチャンスを与えて、評価することが大切だ」と話す。必要な支援や配慮について、当事者と上司との擦り合わせが欠かせない。
(川本和佳英)

[日本経済新聞朝刊2021年6月28日付]