少子・オンライン化で苦境の文具 生き残りへ協業加速プラス 今泉嘉久会長

就学児童の減少に、新型コロナウイルスの感染拡大でオンライン化が加速し文具業界は苦境に陥っている。文具大手プラスの創業家出身で会長を務める今泉嘉久氏は「もし紙がなくなると、売上高の約8割はなくなる」と危機感をあらわにする。文具メーカーが生き残るには、流通の合理化や海外展開などで協業を急ぎ、業界を効率化する必要があると語る。

紙なくなれば売上高8割減

――コロナ下で文具市場の縮小が止まりません。

「オンライン授業やリモートワークが広がり、ペーパーレス化に拍車がかかっています。文具は、紙を前提とした産業です。鉛筆などの筆記具は、紙に文字などを書くためのものです。書いたものを消すのが消しゴムで、紙に穴を開けるために使うのがパンチです。クリアファイルや書類棚も紙を収容するためのものです。もし紙がなくなると、いらなくなってしまう物ばかりです」

「コロナ以前の問題として人口減があります。少子化で小学校に入学する児童数が減っています。ランドセルだけではなく、クレヨンやノートなどの文具も影響を受けています」

――経済産業省などの調査によると、全国の文具店は1991年の約2万6000店から、2016年には7000店強と約7割も減りました。

「減少したのは店舗だけではありません。卸やメーカーも減っています。コロナでこの傾向に拍車がかかっています。何もしなければ淘汰されてしまいます。将来、紙を全く使わないぺーパーレス社会が到来したら、どうなるのでしょうか。プラスでいえば売上高の約8割がなくなります。この危機感を文具業界全体で共有すべきです」

――生き残るためにどんな施策を打っていきますか。

「社内では、今あるビジネスモデルのまま努力するのはやめようと言い続けています。従来モデルのままで利益を増やそうとするとひずみが生じ、最も弱い立場の人にしわ寄せがいきます。だからこそビジネスモデルを変えないといけない。それが経営の仕事です」

「プラスは文具のメーカー機能と、流通機能をあわせもつ会社です。自社に限らず幅広い商品を扱えるのが強みです。昨年は法人顧客のニーズに応じて消毒液やマスク、アクリル板などの品ぞろえを拡充しました。2020年12月期は文具は厳しい結果となりましたが、消毒液や防災用品などの需要が拡大し、全体では若干の減収にとどめることができました」

――文具のビジネスモデルをどう変えていきますか。

「国内市場が縮小し文具店が大きく減少しているのに、文具業界はほとんど変わっていません。メーカー同士が協力しあって合理化、効率化を進める必要があります。文具メーカーは営業や物流、コールセンターの機能を各社で抱えています。協業できれば営業担当者の生産性や、物流効率は大きく向上します」

「原点は1993年に立ち上げた通販サービス『アスクル』にあります。複数メーカーの商品を扱うことで、物流コストなどを削減しました。例えばJR東京駅前にあるオフィスビルには36の文具店が出入りしていました。午前と午後の1日2回配送で、文具だけで72台の配送車が出入りしていたのです」

「もしプラスが配送を代わりにやれば配送車は午前と午後、1日2台で済みます。節約したコストで価格も下げました。このとき協業による合理化の重要性を実感しました」

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