コロナの閉塞感打破 国際的に学力高い日本女性に期待ダイバーシティ進化論(村上由美子)

女性や若者の視点を生かそう(写真はイメージ=PIXTA)

本欄を担当し早4年。古くて新しいテーマであるダイバーシティを多角的に議論してきたが、本稿で最終回となる。1986年の男女雇用機会均等法施行をきっかけに、日本で多様性が社会経済問題として注目され始めてから35年。進捗は一歩進んで二歩下がるというところであろうか。

この1年半ほどは、新型コロナウイルスの猛威が世界を震撼(しんかん)させた。未曽有の危機に直面した人々は意外にもダイバーシティの重要性を認識することになったのではないだろうか。意思決定のプロセスに多様な視点が組み込まれている国では、感染症対策などの政策を国民が支持する傾向がみられた。特に女性リーダー達の活躍は目覚ましく、迅速な決断力、危機管理能力、コミュニケーション力、共感力を発揮した。

一方コロナ禍による悪影響は女性により重くのしかかるという問題も表面化した。日本では非正規雇用の7割を女性が占めていることから、コロナ不況で女性や母子世帯の子供の貧困が深刻化している。特に女性の自殺者の急増は憂慮すべき状況だ。

コロナ危機で、日本では女性リーダー不在という深刻な問題が再確認された。不確実性が高く、激変する世界情勢の中で日本が最も必要としているのは、既存の枠組みから外れた新たな視点ではないだろうか。過去の成功体験にとらわれることのない女性や若者たちが意思決定に加われば、画期的なアイデアが生まれやすくなる。コロナでデジタル化が倍速で進むなど社会構造は変革の時を迎えている。この局面で日本がイノベーション大国になれるかは、リーダーを含む全ての層で多様性が受け入れられるかにかかっている。

我々にとっての朗報は、日本人女性の学力レベルの高さだ。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本人成人女性の読解力及び数的思考力は世界一という結果が出ている。さらに、15歳を対象にした調査では、日本の生徒らの数学的・科学的リテラシーは常に上位10位以内に入る。

こうした優秀な人材の活躍を阻むのは、横並び意識で結果平等ばかりを重視する旧来的な考え方だ。必要なのは、能力を生かすチャンスを平等に与える機会平等。女性や若者にチャンスを与え、持てる力を存分に発揮してもらおう。それがコロナで閉塞感を増す日本の社会経済にブレークスルーをもたらすはずだ。

村上由美子
経済協力開発機構(OECD)東京センター所長。上智大学外国語学部卒、米スタンフォード大学修士課程修了、米ハーバード大経営学修士課程修了。国際連合、ゴールドマン・サックス証券などを経て2013年9月から現職。著書に『武器としての人口減社会』がある。

[日本経済新聞朝刊2021年5月3日付]