現場で考えるDNAは健在

――アマゾンでは購買履歴から商品をお薦めする機能もあります。ネット企業とリアルの小売業が組めば、実店舗でもデータを使った顧客ごとの販促が可能でしょう。

「過去の購買データと位置情報などを使って店舗に来たお客様に、お薦め商品を提示することはできます。しかし機械的に薦められるのは嫌だという声もあります。一方で人間があまり覚えていない顧客データを活用しながら、人が接客しながらお薦めするのであれば違和感はないでしょう。こうした使い方はあり得ると思います」

「商人という言葉が好きです。商品を積極的に売り込み、お客様が『あなたが薦めるなら買いたいな』と思ってくれる。これが商売の原点です」

――大久保さんは大学卒業後、イトーヨーカ堂に入社しました。西友はライバルだったわけですが当時、どのように見ていましたか。

「西友は革新的でした。憧れの企業でしたね。子会社として育てたファミリーマートや『無印良品』などを、どんどん成功させました。他のスーパーとは、ちょっと違った存在でした」

――西友は旧セゾングループの中核企業であり、個性的なDNAを持った名門スーパーでした。動乱の歴史を経た今でも、そうしたDNAは組織に残っていますか。

「こちらに来て社員の皆さんと接すると、(セゾングループ創業者の)堤清二さんが言っていたようなことが十分に残っていると感じました。例えば分権化した組織で店や現場が自分で考えるような力です。西友の歴史の上に新たな挑戦をしていけば、日本で飛び抜けた成長をする小売りになれると思っています」

(聞き手は日経MJ編集長 鈴木哲也)

大久保恒夫
 1979年(昭54年)早大法卒、イトーヨーカ堂入社。03年ドラッグイレブン社長。07年成城石井社長。13年セブン&アイ・ホールディングス常務執行役員。18年リテイルサイエンス社長。21年3月に西友社長就任。愛知県出身。65歳
■ネットスーパー拡大がカギ
 スーパー各社にとって今後は、ネットスーパー事業の拡大が成長のカギとなりそうだ。食品管理のノウハウだけでなく、配送拠点にもなる実店舗を持つ食品スーパーと、受発注システムや宅配に強みをもつネット企業の連携が加速。西友だけでなく、アマゾンと組むライフコーポレーション、英オカドと提携するイオンなどもネットスーパー市場を攻略しようとしている。
 対象エリアも拡大してきた。今夏にはバローがアマゾンと組み、東海地方でネットスーパーを始める計画だ。どの企業連合が「便利で、安く、早い」サービスを構築できるのか。数少ない成長市場を巡る争奪戦がいよいよ本格化する。
(伊神賢人)

[日経MJ2021年4月5日付]

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