漬物を料理に活用 調味料代わり、和洋中にアレンジ
管理栄養士 今泉マユ子
ご飯やお茶、お酒のお供として食卓にあるとうれしいのが漬物。梅干しにたくあん、しば漬け、べったら漬けなど種類が多く、旅先でその土地ならではの品を味わうのも楽しい。漬物の缶詰まで売られていて、私は常備している。大根をいぶした秋田のいぶりがっこ、宮崎のたくあんの缶詰はポリポリとした食感がたまらない。
家庭で漬物をつくるのも以前に比べれば手軽にできるようになった。近所のスーパーでぬか床キットや漬物・ピクルスの素(もと)を購入。定番の白菜やキュウリ、カブ、ナスといったものから、ミョウガやミニトマトまで、漬物にして楽しんでいる人も多いのではないだろうか。野菜が苦手な子どもたちも漬物であれば食べてくれるといった話も聞く。
漬物は野菜の保存法として発達してきた食べ物。塩漬けにすることで腐敗菌などの繁殖を抑え、長期保存を可能にしている。塩分の取り過ぎが高血圧や脳卒中などにつながると言われるようになり、塩分の多いイメージの漬物を敬遠する向きもある。ただ最近では漬物メーカーも塩分を抑える研究開発を重ねており、低塩分の漬物も増えてきている。
そのままで十分おいしい漬物だが、「味のついた野菜」として料理にも活用できる。塩分が調味料代わりにもなり、味わい深く仕上がる。汁物やスープに使うのもいい。酸っぱくなった白菜の浅漬けをごま油でいためてスープに入れると、まろやかな味わいになる。そこにご飯を加えて卵でとじて雑炊風にするのもおすすめだ。さらにトマトやベーコンを合わせれば、彩り豊かな一皿になる。
やはり漬物とご飯は相性バッチリ。チャーハンや炊き込みご飯の具にも適している。おかずとしては今回、刻んだたくあんを入れた鶏つくねを考えてみた。軟骨のようなコリコリとした食感が味わえる。卵焼きやいため物、鍋に入れても合うので試してほしい。
火を使わないメニューでも味の変化が楽しめる。キュウリの漬物を豆腐と納豆と一緒にあえ、白いりごまをかければ、小腹を満たすのにぴったりだ。いぶりがっこやラッキョウなどを刻み、ゆで卵とマヨネーズとあえると、即席のタルタルソースができあがり。フライにかけても、サンドイッチの具としても活躍してくれる。
漬物は種類が多いだけに、それぞれの特徴に合わせて和洋中いろいろなアレンジレシピが考えられそうだ。食べ慣れた漬物の新たな一面が発見できるかもしれない。毎日の食卓に取り入れてみよう。
1969年生まれ。管理栄養士として企業の社員食堂、病院や保育園に勤務。缶詰やレトルト食品を使った時短レシピのアレンジのほか、防災食アドバイザーとしても活躍。
[日本経済新聞夕刊2021年3月9日付]
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