長らく自民党は政策的機能の多くを官僚制に依存してきた。牧原出『崩れる政治を立て直す』(講談社現代新書・18年)は、官僚制の側から自民党の現在を逆照射しているが、そこでは、安倍政権下の官邸主導が官僚制に大きな負荷を掛け、その機能を損ないつつあることが示される。独立機関など安全弁の整備とともに、新しい意思決定方式の確立や、官僚の賢い動かし方を、真剣に考えるべき段階に来ているというのである。

国民への訴え不足

現在の菅義偉政権の苦境も、官僚頼みの政権運営が関係している。人事権を使って官僚を統制することで政権を動かしてきた菅首相の政治手法が、新型コロナ感染症対策では機能していない。政治的に見れば、この政権が政党の力を使わず、指導者が国民に訴えかける力も持たないことに大きな問題がある。官僚が作る政策の直接的効果だけでは、感染症は収束させられない。

人々の行動を変えるには、政治的メッセージと納得感が必要である。指導者のアピールが足らなければ、代わりに自民党の政治家が手分けして人々の意見を聞き、説得しなければならない。政策を、昔は官僚に、最近は首相や官邸に任せ、利害関係があれば介入するが、日頃(ひごろ)は選挙の準備に余念がないという自民党のあり方もまた問われているのである。自民党の底力が問われる局面である。

[日本経済新聞朝刊 2021年2月13日付]

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