縦型洗濯機の強み 水量など細かく調整、思い通りに
洗濯家 中村祐一
ドラム式の洗濯機に興味があるけれど、実際使っているのは縦型という人も多いのではないだろうか。前回再点検したドラム式に続き、今回はそんな縦型の使い方について改めて考えてみたい。
衣類を持ち上げては落とす「たたき洗い」が特徴のドラム式に対し、縦型は主に洗濯槽の回転によって衣類をかきまぜる「もみ洗い」によって汚れを落とす。衣類の量や汚れが多いときには水の量を多めにするときれいになりやすい。水の量が洗浄力につながるタイプの洗濯機だ。
縦型はドラム式に比べれば使う水の量が多い。しかし最近は節水の意識が広がり、縦型でもかなり少ない水の量ですむものが増えている。そこで洗い始めた後、洗濯物が水面より下に隠れるぐらいの水量になっているかを確認してほしい。
もし衣類が水面から上に出てしまっているようであれば、水量が足りていない可能性もある。ただし水の量が多すぎると摩擦が減り、物理的に汚れを落とす力が弱くなってしまう。水位を1段階増やす程度でいい。すすぎも2回以上に設定すると、汚れやニオイが落ちやすくなる。縦型で洗濯するときには水の量が洗い上がりを左右するポイントになる。
縦型の洗濯機を購入する場合、5つのポイントがある。(1)水の量を細かく設定できるか(2)洗い時間を1分単位で決められるか(3)すすぎ回数を1回ずつ増減できるか――。洗濯物の量や素材、汚れ具合に応じて無駄なく、効率よく洗うためにはこうした細かな設定が欠かせない。すすぎの回数が調整できれば、衣類も傷みにくい。
さらに(4)脱水時間も1分単位で決められるか。脱水を長くし過ぎるとシワの原因になる。とりわけ薄手の衣類が多いときには短めに1~2分にしたい。洗濯機から出してからアイロンをかける時間も短縮できる。最後に(5)フタがすぐ開くか。1度回し始めると全くフタが開かない洗濯機も多い。手洗いをしてから軽く脱水だけしたいときもある。洗濯中にフタを開けられるのは都合がいい。
全部お任せというよりは細かく調整しやすいのが縦型の強みだと思う。しかも操作がシンプルで使いやすく、コストパフォーマンスのいいものも多い。この路線を突き詰めていくと、たどり着くのは2槽式洗濯機になるのかもしれない。2槽式を使えば、水量から洗い、すすぎ、脱水の時間までどれも細かく設定できる。洗濯物の量に水量をピタリと合わせたり、脱水を秒単位で止めたり。自分の思い通りに洗濯できるのがいい。
半面、洗濯機につきっきりとなり、時間も手間もかかるのは否めない。何かと忙しい現代社会で使い続けるのは大変だ。細かく調整できる部分と、ある程度は任せられる部分とを併せ持つ縦型を選ぶと洗濯の効率が上がる。
1984年生まれ。クリーニング会社「芳洗舎」(長野県伊那市)3代目。一般家庭にプロの洗濯ノウハウを伝える「洗濯家」として活動。「洗濯王子」の愛称でメディア出演も。
[日本経済新聞夕刊2021年2月2日付]
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