丑年の牛肉トレンド 赤身の米国産や環境配慮の代替肉

日経MJ

今年も話題になりそうな「やっぱりステーキ」。輸入肉だが、丁寧に下処理することで柔らかく食べやすい
今年も話題になりそうな「やっぱりステーキ」。輸入肉だが、丁寧に下処理することで柔らかく食べやすい

2021年の干支(えと)は丑(うし)。飲食業界をウオッチしていて、20年から牛肉にまつわる業態に異変が起きていると感じている。21年は、さらなる変革が起きそうだと予想している。

牛肉関連で気になるトピックは「輸入肉」「アニマルウェルフェア」「環境」「代替肉」の4つだ。

20年はステーキ店の「やっぱりステーキ」(ディーズプランニング)と「ステーキ リバーベ」(五苑マルシングループ)を本コラムで取り上げた。どちらもコロナ禍でも新規店を積極的に出店しており好調。特徴は米国産やオーストラリア産などの輸入赤身肉をメイン食材にしており、「カロリーを抑えながらたっぷりとステーキを楽しみたい」というニーズに応えている。

日本が誇る「和牛」は大理石のような脂肪交雑、いわゆる“サシ”の美しさと口に入れるととける柔らかさが特徴だ。その一方で、過度に栄養を摂取させる飼育方法について、アニマルウェルフェア(動物福祉)の観点から疑問も投げかけられている。

脂肪交雑がウリの黒毛和牛は、二酸化炭素排出量の削減が課題

アニマルウェルフェアとは、動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の心身の状態を指す。日本でも農林水産省が飼養管理指針を示すなど積極的に取り組んでいる。

東京五輪・パラリンピックが21年に開催されれば、和牛への世界の注目が今まで以上に高まるだろう。そのなかで、アニマルウェルフェアの取り組みを世界に向けてどこまで伝えられるかが課題になる。

畜産においての「環境」も話題になるだろう。畜産のなかで、牛肉は鶏肉や豚肉に比べて出荷までの二酸化炭素排出量が多いとされる。さらに牛はゲップや排せつ物から多量のメタンガスも排出する。

環境負荷を少しでも減らすために排せつ物を利用したバイオマス発電などに取り組む農場もでてきている。今後はアニマルウェルフェアとSDGsに対応している農場がいっそう注目されるだろう。

21年は「代替肉」の存在にも注目が集まりそうだ。代替肉はいくつか種類があり、可食部の細胞を組織培養して作る「培養肉」と、大豆などの代替えタンパク質を使用して肉感のある食材を作る「プラントベースミート(植物由来肉)」などがある。

どちらも畜産動物を飼育、輸送、解体するよりも二酸化炭素の排出が少なく、家畜福祉の課題解決に貢献する。ベジタリアン(菜食主義者)やビーガン(完全菜食主義者)などにも対応でき、肉食にまつわる多様な課題解決に貢献する食材として注目されている。矢野経済研究所は、世界の市場規模は2030年に約1兆8700億円規模に成長すると予測している。

すでに海外では米国のビヨンドミートやインポッシブルフーズなどが製品化しており、日本も大塚食品や日本ハムなどが参入している。国内でもバーガーキングなどで、プラントベースミートを使った製品が発売された。筆者は、このプラントベースミートを真っ先に深掘りしたいと考えている。次号ではプラントベースミート市場に一石を投じる企業を取材する。

(フードジャーナリスト 鈴木桂水)

鈴木桂水(すずき・けいすい)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。おいしいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。“おいしい料理のその前”が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出合った産品の販路アドバイスも行う。

[日経MJ 2021年1月15日付]