ひねったプラン、記憶に残す 丁寧な説明とセットで大塚製薬 佐々木修造さん

大塚製薬の佐々木修造さん
大塚製薬の佐々木修造さん

大塚製薬の事業は医療用医薬品と、機能性食品などを手がけるニュートラシューティカルズ(NC)の二本柱から成る。NC事業には「ポカリスエット」などの看板商品も多い。ニュートラシューティカルズ事業部名古屋支店量販部の佐々木修造さん(28)は営業先の記憶に残るよう、少しひねった提案を出し続けている。

「遅くまでお疲れ」。福井出張所に勤務していた入社2年目の新人時代、仕事が片付かず残業していた佐々木さんの机に上司が置いてくれたのは見慣れた茶色いビンだった。自分がいつも営業で売りこんでいた「オロナミンC」を飲み、ふいに口をついて出た言葉が「ああ、おいしい」。

この体験を営業に生かしたい。そこで考えついたのが「あなたは、気配り上司?」というポップを付けた展開だ。担当エリアだった福井県の官公庁に売り込むと「疲れた部下にオロナミンCを買って、ねぎらいましょう」というメッセージ性が評価され、県庁などの売店での販売につながった。

佐々木さんが日々の商談で気を遣うのは「ただ買ってくださいというのではなく、少しひねった提案をする」ことだ。様々な競合会社がある中で、いかに自分たちを印象づけるか。新人時代を過ごした福井出張所で若手の営業担当は自分だけ。年の近い兄貴分的な存在もおらず、がむしゃらに自分なりのスタイルを模索してたどり着いた一つのモットーがそれだった。

手腕が試されたのは2018年に登場した「ボディメンテドリンク」だ。商品の売り物の一つが、タイの伝統的な発酵茶から発見された「B240」という乳酸菌。同社はB240と健康との関係について研究を続け、有用性を確認して市場に送り出した。

だが発売当初はB240の認知が思うように広がらず、営業先へも浸透しないという壁に直面した。研究結果を説明しても、なかなか理解してもらえない。ではどうするか。名古屋支店に異動していた佐々木さんが思いついたのは、実際の体験を通じたプロモーションだった。「1本飲んだからといってB240の効果は実感できないが、続けてもらえれば価値が伝わるはずと考えた」(佐々木さん)。

担当するドラッグストアの社員10人に直談判。ボディメンテを毎日1本、1カ月間飲み続けてもらい、1週間ごとにウェブアンケートに答えてもらった。体調の自覚といった質問項目も自分で考えた。「単に商品を配っているだけではないことを強調するため、会社にも毎週報告書を提出した。アンケート内容はバイヤーと共有し、関係者全員に丁寧な説明を心がけた」

19年11月に実施したこの企画の効果はてきめんだった。佐々木さんが担当しているドラッグストアでは、ボディメンテブランドの20年4~10月の売り上げが前年同期比で2倍以上に伸びた。今年は動画投稿サイト「ユーチューブ」を活用した販促も新たに企画し、顧客の属性などに合わせたターゲティング広告を展開中だ。

大塚製薬の商品群は、ボディメンテのように発売から間がないものから、オロナミンCのように数十年の歴史を持つものまで幅広い。歴史のある看板商品の売り上げをさらに伸ばすには、新製品とは違った工夫も求められる。

発売から40年を迎えたポカリスエットは、近年は熱中症の啓発活動を通じて製品価値を伝えている。佐々木さんも大塚製薬とドラッグストア、自治体の3者で作る熱中症啓発ポスターを提案するなど、創意工夫に余念がない。製品単体の商談にとどまらず、大塚製薬としてどんな貢献ができるのかも常に意識する。同社が持つ豊富な製品群を生かした効果的な売り場提案などにつなげていく。

製品の問い合わせや市場調査の依頼にも素早く正確に対応することを心がける。武器とする「少しひねった提案」を支えるのは、営業の基本となるわかりやすい説明と丁寧な対応だと信じているからだ。「得意先が考える『営業担当者満足度ランキング』があるなら、ぜひ1位を目指したい」。その熱意は隠しきれない。

(大崩貴之)

ささき・しゅうぞう
 2015年関西大学卒、大塚製薬入社。福井出張所を経て18年に名古屋支店量販部に異動。入社から一貫して「ポカリスエット」などのニュートラシューティカルズ関連事業製品の営業を担当。

[日経産業新聞 2020年11月25日付]


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