パリッ、脂じわっ 何本でもいける福岡のとりかわ

「かわ屋」は系列店を含め毎日100キログラムを仕込む
「かわ屋」は系列店を含め毎日100キログラムを仕込む

もつ鍋や水炊き、豚骨ラーメンなど、福岡から全国に普及した料理は数多い。新たな名物として近年、勢力を広げつつあるのが、鶏肉の皮を使った焼き鳥「とりかわ」だ。

通常の焼き鳥の「皮」とは見た目が大きく異なる。皮を串にがんじがらめに巻き付けてタレを付け、じっくりと焼いて余分な脂を落とす。焼き上がると皮の大きさは半分ほどに凝縮され、脂とタレが絶妙にマッチする味わいだ。

福岡市中央区の「かわ屋 白金店」は元祖とされる「焼とり権兵衛」で修業した先代の京谷満幸さんが開いた名店。カウンターには仕込んだとりかわが山積みで、店内には「取りあえず、とりかわ10本」との注文が飛び交う。

店主の中島豪さんは「焼きで全てが決まる」と話す。かわ屋は串1本に鶏1羽分の首の皮を使う。仕込みでは1日1回焼いては特製しょうゆタレに漬け、1日寝かせる。これを6日間繰り返し、タレを染み込ませる。そして7回目の焼きで焦げ目を付け、独特のパリパリ感を出す。

10本単位の注文が多い(福岡市中央区の「とり皮 みつます 天神店」)

口に入れると、かんだ瞬間にパリッという心地良い音が響き、続いて脂がじわっとあふれ出す。「子供からお年寄りまでスナック感覚で楽しめる」と中島さん。かわ屋は福岡にある系列店を含め毎日100キログラムを仕込む。ビールやハイボールとの相性も良く、何本食べても飽きない。

中央区の「とり皮 みつます 天神店」はかわ屋で修業した光増潤さんが開業。皮に含まれるコラーゲン感を絶妙に残すのがこだわりだ。大きな皮を使った串は他店より一回り大きい。味を変えたいときはガーリックパウダーがお薦め。脂とニンニクの風味がよく合い、食がさらに進む。

カウンター前で焼く様子を見るのも楽しみの一つ(福岡市中央区の「皮焼焼鳥 サンバ」)

大衆居酒屋風の店が多い中で、一風変わった店構えなのが「皮焼焼鳥 サンバ」(同区)だ。店主の三塩高博さんが若い頃、サッカー留学をしていたブラジルがモチーフ。店内はおしゃれな喫茶店を思わせる雰囲気だ。「店名に合わせ、楽しい雰囲気にしたかった」(三塩さん)といい、女性だけでも訪れやすい。こだわりは脂とタレの一体感。かむと脂としょうゆタレが混じり合う。食後に出される無料の鶏ガラスープは濃厚な脂をスッと流してくれる。

福岡の新名物に成長したとりかわはここ数年、東京などでも店が増えている。中島さんは「もつ鍋や豚骨ラーメンのように広く定着してほしい」と語る。福岡に来た際は各店を巡り、味の違いを堪能するのもいいかもしれない。

<マメ知識>福岡、焼鳥店で「豚バラ」
福岡市は全国で最も鶏肉好きの街といえる。総務省の家計調査によると、2人以上の世帯で2017~19年の鶏肉への年間平均支出額は1万9853円で、全国の都道府県庁所在地・政令指定都市の中で最も多い。福岡市の調べによると、焼鳥店の数は人口10万人当たりで38.2軒と、政令市の中で最も多い。
そんな福岡の焼鳥店のメニューで最も人気がある一つが実は鶏ではなく、「豚バラ」だ。このほか、牛や魚介類、野菜の串も豊富で、来店客を飽きさせない。

(西部支社 福井健人)

[日本経済新聞夕刊2020年11月5日付]

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