嗅覚障害はコロナ以外でも におい感じにくい副鼻腔炎

NIKKEIプラス1

写真はイメージ(PIXTA)
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新型コロナウイルス感染症で注目された嗅覚障害。においを感じなくなる病気は多く、慢性副鼻腔(びくう)炎もその一つ。蓄膿症(ちくのうしょう)が代表的だが、なかには指定難病の疾病もある。症状の特徴を知って、重症化を防ぎたい。

においが感じられなくなると、料理の味が分からなくなるなどQOL(生活の質)が落ちる。ガス漏れに気づかないなど深刻な問題も起きる。嗅覚障害を起こすものにはコロナのほか、風邪、頭部傷害に加え慢性副鼻腔炎がある。

副鼻腔は頬や額など鼻の周りにある空洞で顔の左右に4つずつある。この空洞の粘膜に炎症が起きる病気が副鼻腔炎だ。3カ月以上続いているものを慢性副鼻腔炎と呼ぶ。アレルギーのほか、ストレスによる免疫力の低下などで慢性化しやくなる。

副鼻腔に炎症が起こると、鼻づまりが続いたり、鼻水が止まらなくなったりする。副鼻腔がある目の奥や頬に痛みを感じることもある。さらに、鼻腔にあるにおいを感じる細胞に、におい物質が届きにくくなり嗅覚障害を生じる。

慢性副鼻腔炎には主に3つのタイプがある。代表的なのが細菌の感染で副鼻腔に膿(うみ)がたまるため、「蓄膿症」とも呼ばれる従来のタイプだ。そして、カビ(真菌)に感染する副鼻腔真菌症。もう一つが、白血球の一種である好酸球が異常に増加して炎症が起きる好酸球性副鼻腔炎だ。

細菌による炎症の治療は、抗生剤を投与する。その他、内視鏡で粘膜にできた鼻ポリープを切除したり、膿やカビを取り除いたりする治療が行われる。

最近の特徴は好酸球性副鼻腔炎が増えていること。日本耳鼻咽喉科学会によると2000年ごろから増加。JCHO東京新宿メディカルセンター(東京・新宿)耳鼻咽喉科の石井正則診療部長は「好酸球性の手術件数が20年前に比べ倍以上に増えた」と話す。

従来の慢性副鼻腔炎との違いは感染症ではないこと。なぜ好酸球が増えるのか原因は分かっていない。ほかの副鼻腔炎に比べると「とろろ汁のように粘り気のある鼻水と、嗅覚障害を起こしやすいことが特徴」(石井部長)だ。

好酸球性副鼻腔炎は目と目の間(鼻の根元)にある副鼻腔に起こることが多い。嗅覚のセンサーが集まる場所に近く、そのため嗅覚障害が起こりやすいと考えられている。

現在の推定患者数は約2万人。難治性であり、2015年から医療費助成制度の対象となる指定難病になった。「患者の約7割がぜんそくを持っているが、アレルギー疾患ではないので一般的なアレルギー薬は効かない」。東邦大学医学部耳鼻咽喉科学講座の吉川衛教授は指摘する。

治療はステロイド薬が基本となる。内服すると効果が高いが、長期間続けると、副腎皮質ホルモンが分泌されなくなるなどの副作用が起こる。このためステロイドの点鼻薬が使われる。

20年3月から、ぜんそくやアトピー性皮膚炎に使われていたデュピクセント(一般名デュピルマブ)が鼻ポリープのある重症の好酸球性副鼻腔炎にも使えるようになった。2週に1回注射する。「高額だが指定難病に対する医療費助成制度を使えば月に1万~2万円程度」(吉川教授)

同じ嗅覚障害でも、「新型コロナの場合は突然嗅覚がなくなるのに対し、副鼻腔炎は徐々に嗅覚が衰えていく」(石井部長)。また、コロナは神経の障害を起こすが「副鼻腔炎の嗅覚障害は物理的に鼻がふさがることが原因なので、ときどき嗅覚が回復することがある」と吉川教授は話す。

風邪の鼻水や鼻づまりは2週間程度で治る。副鼻腔炎は放っておくと悪化するので、症状が2週間以上続いていたら耳鼻咽喉科を受診しよう。

(ライター 伊藤和弘)

[NIKKEIプラス1 2020年9月19日付]

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