高齢がん患者の「耐える力」事前評価 治療に生かす

がん患者の7割強を占める高齢者の健康状態や認知機能などを事前に詳しく調べ、一人ひとりの「耐える力」を把握して治療をする動きが活発になってきた。高齢者は同じ年齢でも健康状態などの個人差が大きく、抗がん剤の効き方や副作用など体への影響や負担の違いが生じやすい。超高齢化社会のがん治療として普及する兆しが出てきた。

九州がんセンターは、高齢のがん患者を対象に機能評価を実施している=同センター提供

福岡県に住む90歳代の男性は舌がんを患い、九州がんセンター(福岡市)を受診した。高齢のため、主治医は一度は切除手術をためらったが、健康状態などを調べると運動能力や持病の重さ、精神状態や家族の支援には問題がなかった。手術をして術後の経過は良好、抗がん剤で治療中だ。

同センターは2018年9月に老年腫瘍科を開設。高齢のがん患者の運動能力や認知機能、生活を支える家族の有無などを「高齢者機能評価」として丁寧に調べている。高齢がん患者を診る専門部署の設置は国内初だ。500人を超す患者を調べた西嶋智洋科長は「一人ひとりの健康状態などに応じた治療を施す必要がある」と指摘する。

というのも、高齢者の健康状態は予想以上に様々で、中年並みに健康な人も、極端に体力が落ちた人もいることがわかったからだ。

家族の支援があるかないかでも、治療経過は異なってくることもあるという。

同センターでは75歳以上の初診の全てのがん患者に、まず「G8」という簡易な健康状態の評価を実施する。看護師が栄養状態、内服薬、歩行や抑うつなどを5分程度で問診し、0~17点で採点する。点数が低く、主治医が必要性が高いと判断した患者に、約1時間かけて老年腫瘍科で機能を評価する。

評価でまず調べるのは運動能力だ。4メートルを歩く速度や、椅子に座った状態から足の力だけで立ち上がるのにかかる時間などを測る。次に、日常生活に必要な動作がどの程度できるかを調べる。歩行や着替え、食事などのほか、家事や交通機関の利用など一人暮らしに必要な動きが可能かを見る。

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