注目メディカルフィットネス 医師の処方基に運動指導

スタッフの和田亮一さんの指導を受けながら、バーベルを持ち上げる大森貞子さん(千葉県勝浦市の勝浦スポーツクラブ)
スタッフの和田亮一さんの指導を受けながら、バーベルを持ち上げる大森貞子さん(千葉県勝浦市の勝浦スポーツクラブ)

医療機関が運営するメディカルフィットネスが注目されている。医師の処方箋に基づき、専門家が安全な運動法を指導してくれる施設だ。外出自粛で高齢者の健康不安が指摘されるなか、医学的な裏付けのある運動施設のニーズは高まりそうだ。

「今日は10回、バーベルを持ち上げましょう」。勝浦スポーツクラブ(千葉県勝浦市)の会員、大森貞子さん(61)は20キロのバーベルを持ち上げた。指導するのは職員の和田亮一さんだ。その後、自転車こぎやランニングマシンなどの運動を次々とこなした。

一般的なフィットネスクラブのように見えるが、実は隣接する勝浦整形外科クリニックが運営するメディカルフィットネス施設だ。和田さんは健康運動実践指導者という資格を持つ。

大森さんは9年前に腰痛を発症し、同クリニックを受診した。診察結果をもとに、体調や体格に合ったメニューを和田さんに指導してもらう。重点的に体幹を鍛える運動をした結果、4カ月後には痛みが和らいだ。

医療データを運動メニューに直接反映できるのが、メディカルフィットネスの強みだ。大森さんも「主治医と連携した指導なので安心して運動できる」と信頼を寄せる。

「誰でも亡くなる直前まで元気でいたい。それには理にかなった運動をすることが大事だ」。同クリニックの渡辺茂治総務部長はこう話す。クラブは3月以降、コロナの感染拡大を受けて休館したが、6月から65歳以上に限定して営業を再開した。いち早く運動機能を向上させる必要があると考えたためだ。現在は通常営業している。

東京都青梅市にも施設がある。多摩リハビリテーション病院運営のメディカルフィットネスセンタープラムだ。マシンによる筋トレやプールでの水中運動などができる。

佐々木偉子さん(73)は6年前、股関節を痛めて人工関節の手術を受けた。手術直後は筋肉が固くなり上手に歩けなかったが、プラムで専門スタッフが作成した運動メニューをこなすうちに筋肉がほぐれ、難なく歩けるようになった。

「すぐにスタッフが適切な助言をくれる。症状に合った運動法を教えてくれるので安心」と佐々木さんは満足そうだ。

生活習慣病の人にも有効だ。群馬県高崎市の黒沢病院が運営する「メディカルフィットネス&スパ ヴァレオプロ」に4年前から通う太田良一さん(55)は糖尿病を患う。以前、体重は110キロ、ヘモグロビンA1c値も8%以上(正常値は5.6%未満)あった。

太田さんを指導するのが運動療法と管理栄養士の資格を持つ横山勇さんだ。血糖値を下げる運動と食生活の改善を促した。例えば、焼き肉は食べても締めの冷麺は控える。その結果、体重は100キロを切り、ヘモグロビン値も6%台後半まで下がった。

太田さんは「横山さんは疑問に感じたことをその場で丁寧に答えてくれるので心強い」と話す。

各施設は持病のある高齢者の利用が多いので、検温や消毒はもちろん、人数・時間制限、マシンの間隔を空けるなどのコロナ対策を徹底する。適度な運動はしたいが、外出は控えたい。そんな揺れる気持ちを抱えながら、持病の悪化を懸念する人もいるだろう。メディカルフィットネスはそうした心配を払拭するひとつの手段といえそうだ。

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個人指導施設、集客に期待

メディカルフィットネスの普及は、1992年の医療法改正まで遡る。かつて国は病院に対し、運動施設などの付帯事業を認めていなかったが、これを解禁した。疾病予防や健康づくりの重要性の高まりが背景にある。

会費は一般の利用と変わらない例が多い。国の要件を満たす施設なら、治療費とみなされ、医療費控除の対象となる。日本メディカルフィットネス研究会によると、医療機関が運営する施設は200カ所ある。一般のクラブが医療機関と連携する施設をあわせると、約350カ所以上になる。

専門誌「フィットネスビジネス」の古屋武範編集長によると、最近ではマシンだけを置いた小規模施設や個別指導重視の施設が人気だ。「メディカルフィットネスのような個人指導の施設はコロナの影響が小さく、今後も集客が期待できる」と話す。

(高橋敬治)

[日本経済新聞夕刊2020年9月2日付]

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