好奇心くすぐる散歩術 市区町村の境界で意外な発見

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送水口などの構造物を探すのも散歩の楽しみの一つだ(8月、東京都港区の路上)
送水口などの構造物を探すのも散歩の楽しみの一つだ(8月、東京都港区の路上)

コロナ禍で遠出ができないと気分転換もままならない。だが、散歩道など身近なところでも冒険気分を味わえる。大人の知的好奇心をくすぐる散歩術をプロに聞いた。

散歩のお供が地図。「月刊地図中心」編集長で町歩きツアーを主催する小林政能さんは「市区町村の境目や標高に注目すると良い」と話す。地形図や地図アプリなら標高などがわかるが面白いのか? 小林さんが案内してくれた。

まず訪れたのがJR信濃町駅(東京・新宿)近くの千日坂だ。新宿区と港区の境に沿っている。地図で標高を見ると坂が谷になっていることが読み取れる。「谷の地形が行政区の境目に使われたことがわかる」(小林さん)

神宮球場付近に来ると、小林さんが立ち止まる。「この道を見てください」と指し示したのは港区と新宿区の境界をまたぐ道だ。境界線越しに道路の舗装やガードレールの形などが大きく変化していた。何気なく通る道に面白い景色が埋もれていることを実感した。行政区の境で視覚障害者の誘導ブロックが途切れるなど都市の問題にも気づく。

国立競技場(東京・新宿)の側を通る道も渋谷区と新宿区の境界だ。周辺と比べ標高が低い道は地下水路の「暗渠(あんきょ)」となっていて、渋谷川の一部だったという。道の上を向くと「観音橋」という交差点の標識が目に入り、橋がかかっていたことがわかった。

道すがら、明治時代の測量の基準となる「几号(きごう)水準点」の痕跡なども見つかった。「好奇心をもって道を眺めると、知らなかった町の姿が見えてくる」(小林さん)

古地図を使うと意外な一面に気づいたり、発見したりできる。イラストレーター「山田全自動」として活動する福岡市のウェブ制作会社の社長、山田孝之さんは路上で石碑や面白い形の道を見つけると写真で記録を残す。家などで九州大などが公開する古地図と照らし合わせる。「誰もが知っている歴史上の人物の名残がみつかるなど、宝探しのような楽しさがある」という。趣味で始めた調査を地道に続け「福岡路上遺産」という本を出版した。

地理や歴史以外に散歩道を楽しむテーマは多い。その一つが道ばたで見かける構造物だ。ぱっと思いつくのはマンホールやブロック塀だが、ファンが増えているのが火災発生時にビルの高層階などに消化用の水を届ける送水口だ。形式美自体も楽しめるが、製造されなくなった昭和時代の「ビンテージ送水口」を探すのも楽しい。飾り板に書いてある文字を見ることで、年代を見分けられるという。

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