コロナ後のまちづくり 田舎の「適疎」が東京の手本に日本総合研究所主席研究員 藻谷浩介

「自分が変わる」の遠い先に、いつのまにか日本が「変わっている」瞬間があるイラスト・よしおか じゅんいち
「自分が変わる」の遠い先に、いつのまにか日本が「変わっている」瞬間がある イラスト・よしおか じゅんいち

「コロナ禍で日本は変わる」のか?

そのように語る方には、「あなた個人、御社自体は、この機会に何を変えますか?」と問いたい。自分や自社がまず何かを変えないで、日本の何が変わるのだろう。

日本は「変わろうとしない社会」だ。「契約は署名が原則。記名捺印(なついん)は特例で認める」と、昭和以前から法律には書かれていたのに、令和になっても捺印のために出社する人がいた。コロナ禍でも喫煙者は煙を吸い続けたし、接待型飲食業に通う人は通い続けた。テレワークの試行など考えもしなかった企業の方が圧倒的多数だ。

自己変革の好機

コロナウイルスは、大都市の過密状態に警鐘を鳴らしている。国内の死者の3人に1人は都民だ。特別区部では、人口に占める陽性判明者の比率が全国平均の4倍近い。港区だと9倍、新宿区は16倍だ。過密の中で暮らすこと自体に高いリスクがあることが、改めて明白になっている。

しかしこれをもって、「東京が普通で田舎は“過疎”だ」という国民的思い込みは変わるだろうか。「東京は“過密”で田舎は“適疎(てきそ)”だ」と、皆が口にする日は来るのだろうか。日本的な惰性は、急には改まらない。

だが希望は漸進の中にある。この機会に禁煙に踏み切る人も、喫煙者の1~2%はいるかもしれない。住まい方や働き方を変えると決めた人も、1~2%はいるかもしれない。都会から若者を呼び込むべく自己変革に進む自治体も、1~2%はあるかもしれない。

コロナ禍で「日本が変わる」のではなく、「自分が変わる」こと。1~2%が静かな冒険に踏み出し、「変える」べきものをじっくり変えていくこと。その遠い先に、いつのまにか日本が「変わっている」瞬間がある。

若者根付かせる

『きみのまちに未来はあるか?』(除本理史・佐無田光著、岩波ジュニア新書・2020年)は、これから進学ないし就職する若者向けの本だが、特に地方を知らない大都市育ちに手に取ってほしい。著者も、首都圏で生まれ外に出た40代の研究者だ。過疎地にこそ、都会や大企業に欠落した「価値」があるという彼らの気づきには、人生の真実がある。

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