『ローマ人の物語』でひらめき 通商交渉に秘密兵器日本エネルギー経済研究所理事長 豊田正和氏

1968年に入学した大学は学生運動のさなかにあった。
とよだ・まさかず 1949年生まれ。東大法卒、通商産業省(現経済産業省)入省。資源エネルギー庁勤務や経済産業審議官を経て、2010年7月から現職。

1年間は授業もなく、学内は騒然としていました。私自身は非武装中立論にひかれました。ところが、非暴力を信条としていた友人が、全共闘の石にあたり、翌日から武闘派になりました。理想に失望して模索していた時に読んだのが『宰相吉田茂』です。

当時、世間では吉田元首相の評判は良くありませんでしたが、この本は客観的です。戦後日本の経済優先主義をつくりあげた現実的な主張や、「国家とは何か」「国の発展のために何をすべきか」を信念として考える姿に共感を覚え、通商産業省(現経済産業省)を志すきっかけになりました。

著者の高坂正堯氏は新進気鋭の政治学者として積極的に論文を発表しており、4、5冊を一気に読みました。『海洋国家日本の構想』の「英国は海洋国家だが、日本は島国。日本も構想を持った海洋国家にならなければならない」との主張は明快です。

国際政治学者の著作は国家とは何かを考えるヒントを与えてくれます。現代は中心となる極がない「Gゼロの世界」と言われます。主張はわかりやすいのですが、どうすればいいのかとの解決策がありません。『新しい中世』が指摘する、相互依存関係が深まる多極化した世界への移行がまだ続いていると考えるべきではないでしょうか。

『なぜ国家は衰亡するのか』は、エコノミストが主導する日本の改革はビジョンを欠き、模倣に陥りかねないと指摘します。グローバルスタンダードを尊重する一方、日本が失ってはならない価値もあります。日本的、アジア的な発想でアジアが一体となって発展する策を探るのが日本の責任です。

通商交渉の最前線に立ってきた。

パリの国際エネルギー機関(IEA)での勤務を終え、87年から通商政策に従事します。アジア太平洋経済協力会議(APEC)の立ち上げやダンピング交渉に携わりましたが、当時は日米の経済摩擦がエスカレートしつつある時でした。93年からは米州課長として日米包括経済協議を担当します。

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