「在宅疲れ」を解消 座ってほぐすストレッチで整える
新型コロナウイルス対策に伴う自粛生活は、知らず知らず心と身体に負担をかけているかもしれない。仕事とプライベートの境目が曖昧なことによる疲れやストレスを、心身のバランスをとる運動でやわらげよう。
緊急事態宣言で広く浸透した在宅勤務。解除された後も第2波の拡大防止だけでなく、新たな働き方としても捉えられて採用する動きが続きそうだ。
とはいえ在宅勤務には、今なお戸惑う人は多いのではないか。ストレスを過剰に感じると、脳内で感情調整に関わるセロトニンやノルアドレナリンという神経伝達物質が働きにくくなる。その結果、自律神経のバランスが乱れて不眠や食欲不振(または過多)になったり、気分が落ち込みやすくなったりする。そこで、自宅で簡単にできる運動でしっかり予防したい。
まずは、自律神経を整えるため床に座ってできるストレッチを試そう。最初は(1)あぐらで深呼吸する。足を組んで背筋を伸ばし、両手を膝付近に置いて肩の力を抜くのがポイント。クッションや六つ折り程度に丸めたバスタオルをお尻の下に入れて高くすると骨盤が安定し背筋を伸ばしやすくなる。この状態で大きく深呼吸を繰り返すことで自律神経のバランスがとれる。
続いて(2)前屈。痛みや苦しさを感じるほど前傾しないよう注意し深呼吸を繰り返す。ゆっくりと身体を起こしたら、次は体の側面をほぐす(3)体側(たいそく)伸ばし。片手を身体の横に置き、もう一方の手を耳に添えるようにして息をはきながらゆっくり上体を倒して体側を伸ばす。脊柱のゆがみや脇腹が解放されていくのを感じよう。
余裕があれば(4)起き上がりこぼしにも挑戦。両膝を曲げて膝裏に手を添えて前後にゴロンゴロンと動く。脊柱が刺激されることでリラックス効果が高まる。
座りながらの体操の後は、あおむけ(仰臥(ぎょうが)位)のストレッチで全身を大きくほぐす。まずは(5)胸開き深呼吸。両腕を伸ばして開き、力を抜いてゆったりとした呼吸を繰り返す。徐々に大胸筋や呼吸筋が伸ばされ、肋骨が解放されていくのを感じよう。続いて、両腕を真上に伸ばし手のひらを合わせて(6)横隔膜を刺激。合わせた腕を5秒程度かけて、頭上へ伸ばして戻す(5回程度)。腕の動きと呼吸によって横隔膜が上下するのを感じるように心がける。
さらに、(7)X型背伸びと脱力を繰り返してみよう。ローマ字のX字を描くように両腕、両脚を外に向けて伸ばす。5秒程度伸ばしたら「ストン」と脱力。5回繰り返す。さらに(8)両膝倒し。ゆっくり左右に倒してみる。座りすぎで腰に負担がかかりがちな人にもお勧めしたい。
最後は(9)腹式呼吸でリラックス。全身の力を意識的に抜き、目を閉じて呼吸に集中する。大きく息を吸いながら下腹部を膨らませ、はきながらへこませる。就寝前や午後の休憩時間などに行うと集中できて効果が高まる。
在宅勤務を実りあるものにするためには心と身体の声を聴く余裕が大切。今こそ、しっかりメンテナンスしたい。
(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木邦子)
[NIKKEIプラス1 2020年5月30日付]
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